2026年5月1日
婦人科 佐野 靖子
こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会(旧更年期学会)専門医・抗加齢医学会専門医であり、女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今回は天然型のエストロゲンを配合した低用量ピル アリッサ配合錠について説明します。
低用量ピルはエストロゲンと黄体ホルモン(プロゲスチン)の2種類の女性ホルモンを含んでいます。黄体ホルモンには排卵を抑制する効果があり、エストロゲンを併用するとこの効果が高まります。また黄体ホルモンにエストロゲンを併用することで子宮内膜が安定し、不正出血が起きにくくなります。このようなメリットから現在の低用量ピルにはエストロゲンと黄体ホルモンがセットで用いられています。
低用量ピルに含まれる黄体ホルモンの種類については以前のブログ(低用量ピルの種類と使い分けについて ③黄体ホルモンの種類 ④投与方法)についても説明しました。黄体ホルモンには様々な種類があり、その性質で使い分けをすることがあるということでしたね。一方ピルに用いられるエストロゲンの種類は限られていました。天然のエストロゲンにはE1からE4までの4種類がありますが、その中でも一番強い活性をもつとされるのが卵巣から分泌される17βエストラジオール(E2)です。ピルに含まれるエチニルエストラジオール(EE2)はこのE2を元に作られた合成エストロゲンで、高い活性を持ちます。2024年12月にアリッサ配合錠®が発売されるまで、本邦で発売される低用量ピルに含まれるエストロゲンはEE2の一種類のみでした。

アリッサ配合錠®は天然のエストロゲンであるエステトロール(E4)を含む低用量ピルです。E4は胎児の肝臓によってのみ産生されるエストロゲンで、妊娠中の母体にも検出されます。このE4は組織によって選択的に働くという特徴的な作用をもっています。
ホルモンが体のそれぞれの部位(組織)に影響を及ぼす時、細胞にある受容体(鍵穴のようなもの)を介して働きかけをします。女性ホルモンであるE4にはこの受容体を介して作用を及ぼすだけでなく、受容体によっては逆に作用を及ぼさないようにブロックするという特徴的な性質があります。例えばE4は子宮内膜や腟では作用を及ぼしエストロゲン活性を示します。一方乳房では乳房上皮にある受容体にくっつきますが活性化はせず、同じ受容体に結合して活性化させようとするE2と争って結合します。その結果E2の乳房上皮細胞増殖作用を弱める事がわかっています。上記はラット、マウスの試験管の実験での結果にはなりますが、この特徴のためにE4を用いたピルは乳癌リスクが従来よりも少ない可能性があると期待されています。
またアリッサ配合錠®は従来のEE2を使用したピルに比べて、血液を固めたり溶かしたりする指標となる検査項目への影響が少ないことが臨床試験でもわかっています。そこでEE2を使用したピルよりも血栓症のリスクが低いのではないかとされています。

アリッサ配合錠には黄体ホルモンとして第4世代のドロスピレノンが含まれています。
同じドロスピレノンを含む黄体ホルモン単独のピルであるスリンダについてのブログ(プロゲスチン単剤の経口避妊薬 スリンダ®錠28について)でも触れましたが、ドロスピレノンには男性ホルモン作用がなく、ニキビや多毛などの男性化徴候が気になる方にはいいでしょう。またむくみも起こしにくいと考えられます。
アリッサ配合錠を初めて飲む場合、月経初日より開始します。1シートの前半に24粒の実薬があり4粒の偽薬がそれに続きます。4粒の偽薬を飲んでいる時にリセットの出血が起こる仕組みになっています。ヤーズフレックスやジェミーナ配合錠の様に周期を延ばす連続投与としては使えないので注意が必要です。
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参考文献:
富士製薬工業株式会社,アリッサ配合錠の臨床試験と臨床的安全性,2025年7月
公開日:2026年5月1日
