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脳神経外科Neurosurgeryについて

概要

脳神経外科は「神経系(脳・脊髄・末梢神経)に生じ、手術を要する可能性のある疾患を主に診療する科」ですが、日本の脳神経外科医は「外科医の目と技を持った神経系総合医」として、神経系に生じる疾患の予防・急性期の内科的治療・回復期のリハビリ・慢性期の内科的管理なども行っています。この点、手術に特化した欧米のそれとは良くも悪くも異なります。

脳神経外科はよく脳外科あるいは脳外(のうげ)と略されますが、外国語ではNeurosurgery(ニューロサージャリー、英語)、Neurochirurgie(ノイロヒルルギー、独語)、Neurochirurgie(ニューロシルルジー、仏語)であって、正確には中国や韓国で称されているように神経外科なのでしょう。神経系は脳だけでなく脊髄と末梢神経も含みますから。

なお、日本における脳神経外科の黎明期・草創期・発展初期の歴史に関心のある方はコチラをご覧ください1)

当科が扱う症状/疾患

頭痛、頭部打撲、もの忘れ、手足の脱力やしびれ、歩行障害(まっすぐ歩けない、歩幅が狭くなった)、複視(物が二重に見える)、顔が痛い、顔がピクピクする、顔の片側の麻痺(目が閉じない、口角が垂れる)、耳鳴り、めまい等の症状を診療しています。

また脳卒中予防の一環として、高血圧症・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症といった生活習慣病の管理および心房細動に対する抗凝固薬処方なども行っています。

頭痛

頭痛の原因は様々です。頭痛の大半は原因がハッキリとは分かっていない片頭痛や緊張性頭痛ですが、命に関わり緊急治療を要するクモ膜下出血や動脈解離2)によることもあります。特に症状が非典型的なときのクモ膜下出血などでは注意が必要で、新宿区や渋谷区の医師会勉強会で発表しました(資料はコチラ)。脳腫瘍が見つかることもありますし、意外にも頭部打撲と無関係の急性硬膜下血腫が原因だったこともあります3)
 もちろん当クリニックでは片頭痛や緊張性頭痛の治療と管理を積極的に行っております。

頭部打撲

頭を打撲した後徐々に頭の中、脳を包んでいる硬膜という白い膜の内側に血がたまり、2、3週間から2、3ケ月して症状が現れてくる慢性硬膜下血腫という疾患があります。頭を強く打ったときは、一度は頭部CTを撮っておいた方がいいでしょう。慢性硬膜下血腫の説明はコチラをご覧ください。

頭部CT、MRIといった画像診断は、当院から徒歩5分程度のところにある提携先医療機関にて実施いたします。

もの忘れ(または認知症)

もの忘れはそれなりの年齢になると多くの人が経験しますが、認知症と言えるほど病的な認知機能低下なのか否かを評価しておくことが大切です。
 認知機能低下の原因が慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症(脳の隙間に脳脊髄液がたまる疾患)、あるいは甲状腺機能低下症などの場合には、治療により治癒が期待できるのでそれらを除外しておくことも大切です4)。稀ですが、硬膜動静脈瘻という脳血管疾患が原因のこともあります5)

アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症では、生活指導と内服治療が中心になります。

手足の脱力/麻痺やしびれ

脳卒中(脳血管疾患)、脳腫瘍(頭蓋内に発生した腫瘍)、脊椎脊髄疾患などが原因になります。糖尿病でしびれが出ることもあります。

急に症状が現れた場合は緊急治療を要する脳卒中が疑われるので、直ちに医療機関を受診してください。
 脳卒中ではよく「FASTが大事」と言われます。Face(顔の片側がゆがむ、口角が垂れる、笑うと非対称になる)、Arm(片側の腕に力が入らない)、Speech(呂律が回らない、言葉が出ない)といった症状が急に出たらTime(発症時刻を確認して急ぐ)を意識して行動しなければいけません。頭部CTや脳MRIなどを受けることになります。

頚椎変性疾患による慢性脊髄圧迫6)7)では症状の程度にもよりますが、手術が勧められることも少なくないです。手術等についてはコチラをご覧ください。

めまい

内耳に原因がある耳鼻科的な末梢性めまい、小脳や脳幹に原因がある脳神経外科内科的な中枢性めまい、頚椎に原因がある頚性めまい、血圧や不整脈などが原因となっているめまいなどがあります。

頻度的には半数以上が耳鼻科的なめまいで、特に良性発作性頭位めまい症が多いですが、脳が原因の場合は命に関わるので、まず脳神経外科を受診して、小脳梗塞や小脳出血などが否定されたら耳鼻科を受診するのが安心かもしれません。

複視(物が二重に見える)・視力低下・視野欠損

このような場合眼科を受診することが多いと思いますが、脳神経外科的疾患が見つかることもあります。複視の原因が脳動脈瘤や硬膜動静脈奇形・静脈洞血栓症8)9)のこともありますし、視力・視野障害で脳腫瘍や脳血管疾患が見つかることもあります。

(参考文献)
  • 1) 羽井佐利彦:清水健太郎の生涯と日本脳神経外科発展初期の歴史.交通医学 68:163-168, 2014
  • 2) 羽井佐利彦、田部井勇助、近藤達也、蓮尾金博:椎骨動脈解離とBabinski-Nageotte syndrome.脳と神経 58:264-266, 2006
  • 3) Awaji K, Inokuchi R, Ikeda R, Haisa T: Nontraumatic pure acute subdural hematoma caused by a ruptured cortical middle cerebral artery aneurysm: case report and literature review. NMC Case Rep J 3:63-66, 2016
  • 4) 羽井佐利彦:第13章 今日抱える医療福祉の課題 B.認知症者の支援の医療福祉.日野原重明・西三郎・前原澄子・秋山智久監修「医療福祉学の道標」金芳堂.165-169, 2011
  • 5) Waragai M, Takeuchi H, Fukushima T, Haisa T, Yonemitsu T: MRI and SPECT studies of dural arteriovenous fistulas presenting as pure progressive dementia with leukoencephalopathy: a cause of treatable dementia. Eur J Neurol 13:754-759, 2006
  • 6) 羽井佐利彦、近藤達也、蓮尾金博、斎藤澄、神宝知行:側方に遊離迷入し基質化した頚椎椎間板ヘルニア.脳と神経 56:1054-1055, 2004
  • 7) Kim P, Haisa T, Kawamoto T, Kirino T, Wakai S: Delayed myelopathy induced by chronic compression in the rat spinal cord. Ann Neurol 55:503-511, 2004
  • 8) 羽井佐利彦、近藤達也、吉田伸一:乳癌、前立腺癌に対する黄体ホルモン製剤療法中に発症した脳血管障害の3例.癌の臨床 40:450-454, 1994
  • 9) Haisa T, Yoshida S, Ohkubo T, Yoshikawa K, Machida T: Primary empty sella in association with superior sagittal sinus thrombosis and dural arteriovenous malformation. Case report. J Neurosurg 81:122-125, 1994

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医師紹介

羽井佐 利彦
羽井佐 利彦(はいさ としひこ)
卒業大学 東京大学 1985年卒
主な経歴 東京大学医学部脳神経外科に入局。

東京大学医学部附属病院、東京厚生年金病院(現JCHO東京新宿メディカルセンター)、ピティエ・サルペトリエール病院(仏政府給費留学)、関東労災病院、国立病院医療センター(現国立国際医療研究センター病院、医長)、JR東京総合病院(部長)などに勤務し、現在に至る。
専門領域 日本脳神経外科学会/日本専門医機構認定 脳神経外科専門医

日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医

日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会認定 脊椎脊髄外科専門医

日本医師会認定 産業医

受診される方へのメッセージ

頭痛、頭部打撲(頭をぶつけた)、もの忘れ(が気になる)、手足の脱力やシビレ、歩行障害(まっすぐ歩けない、歩幅が狭くなった)、複視(物が二重に見える)、顔が痛い、顔がピクピクする、耳鳴り、メマイ等に対する診療を行っております。また、脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)の予防や慢性期での管理、未破裂脳動脈瘤についても相談に応じます。手術を要する場合は、しかるべき病院に紹介いたします。

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