低用量ピルの種類と使い分けについて ②一相性か段階型か

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。低用量ピルには保険適応・自費のいずれにも複数の種類があり、その違いは非常にわかりにくくなっています。そこで前回のブログ(コチラから)ではピルの違いの中でも①エストロゲン量の違いについて説明しました。今回は個々の低用量ピルの違いの②一相性か段階型かについて説明します。

 

 低用量ピルにはエストロゲンと黄体ホルモンの2種類のホルモンが含まれています。一相性の低用量ピルにはこの2つのホルモンの量が変わらず、周期を通して一定の量が含まれています。図にするとこんなイメージです。とてもシンプルですよね。


 ただし一相性のピルには弱点もありました。ピルに含まれる黄体ホルモンにはアンドロゲン(男性ホルモン)作用があります。改良によりピルに含まれるエストロゲン量が減ってくると、相対的に黄体ホルモンによるアンドロゲン作用が強くなり、脂質代謝への影響が問題になりました。そこで黄体ホルモン量を少なくするため段階型のピルが開発されました。下の図はトリキュラー(後発薬はラベルフィーユ)の配合パターンを図示化したものです。最初は少ない量より開始しますが、途中に段階的に量を増やしたりして、黄体ホルモンの総量を抑えるように工夫されています。段階型のピルは後半につれてホルモン量が増えるため周期の後半にみられる不正出血がおきにくいというメリットもあります。


 段階型のピルでは含むホルモン量が変わっていることをわかりやすくするため、ホルモン量に応じて錠剤の色を変えています。もしこのブログを読んでいる方の中ですでに低用量ピルを使用している方がいれば、シートの中の錠剤の色を見てみて下さい。列の最後の偽薬(4-7日間)を除いてシートの粒が全て同じ色であれば一相性のピル、5-10日単位で微妙に色の変化がある場合は段階型のピルの可能性が高いでしょう。

 

 段階型のピルはこのように一相性のピルが進化して生まれました。段階型にすることでホルモンの用量が抑えられるならそれでいいのでは?とも思いますよね。ただし段階型の低用量ピルには短所もあります。

 

 例えばピルを内服中に月経周期を調節したい時、中でも生理が来るのを遅らせるために周期を延長する場合を考えましょう。この時、一相性のピルでは次のシートからシンプルに数錠移動・追加するだけで周期を伸ばすことができます(実際の周期調整に関しては担当の先生ともご相談下さいね)。ただし段階型のピルでは周期の進み具合でホルモン量が上下します。そこで周期を伸ばすためには次のシートの一番後半の、ホルモン量が多い部分から持ってくる必要があります。このように段階型のピルではイレギュラーな飲み方の場合、対応が煩雑になることがあります。また飲み忘れなどで途中でシートを中断してしまったとき、一相性のピルであれば残りの錠剤を次のシートとつなげたりと汎用がききます。それに対し段階型の場合はシートの始めから順序通りに飲む必要があり、融通がききにくいことがあります。そこでアンドロゲン作用を抑えた新しい黄体ホルモンが徐々に登場してくると、一相性のピルの人気も回復してきました。現在発売中の低用量ピルの一相性、段階型は下の表の②のようになっています。

 現在、本邦で保険で使用する低用量ピルはすべてが一相性です。それに対して自費の低用量ピルには一相性(マーベロン、後発薬はラベルフィーユ)も段階型(シンフェーズ、アンジュ、トリキュラー)もあり、ライフスタイルに応じて選択できるようになっています。③~④の黄体ホルモンの種類と投与方法については次回のブログに続きます。

 

 婦人科のページはコチラから。

 

 

参考文献

菅陸雄.低用量経口避妊薬 進化して来たピル,37年の歩み.ファルマシア.1997,vol33,No10,

P1113-1115

リプロヘルス情報センター.“ピル50年史”.m3.com学会研究会.

http://rhic.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=4368(参照2024-08-29)

 










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