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低用量ピルの心配なことについて

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。以前のブログでは生理痛の原因になる婦人科の病気が女性の一生に与える影響について説明しましたこちらから。現在では生理痛に低用量ピルやディナゲストを適切に開始することで、生涯における悪い影響を少なくすることも期待されています。ただ、ティーンの娘さんを持つお母さん、お父さん世代ではホルモン剤、特に低用量ピルと聞くと抵抗感がある方も少なくないように思います。

 

 低用量ピルには排卵を抑制する作用があり、60年ほど前に避妊薬としてアメリカで誕生しました。その後時代の経過とともに、低用量ピルには生理痛を軽減する効果もあることもわかりました。そこで低用量ピルが生理痛の治療に使用されるようになり、2008年には日本でも保険診療で使える治療薬としての低用量ピルが発売されました。現在婦人科を受診する患者さんの多くが低用量ピルでの治療を受けています。

 

 低用量ピルが生理痛を軽くする仕組みについては以前のブログ「月経困難症(生理痛)の治療 ホルモン剤について」こちらから)でもお話ししました。そこで、今日は低用量ピルの副作用や心配なことについて説明をしていきましょう。



 まずピルの副作用について。ピルにはマイナートラブルと呼ばれる副作用がいくつかあります。特に飲み始めの1-2ヶ月の間は不正性器出血や頭痛、吐き気・嘔吐や胸の痛み、お腹の痛みがでることがあります。これはピルの中に含まれる女性ホルモン剤による影響で多くの場合は飲み続けることによって症状は軽くなっていく傾向にあります

 

 ただ稀ではあるもののピルには重大な副作用もあります。血管の中に血の塊ができる血栓症です。ピルを使っていない女性10,000人が1年間に血栓症を起こす頻度は1-5人に対し、ピルを使っている女性では3-9人に増えます。ただし、これって実際にはどのくらいなのでしょう。そこで血栓症リスクが高いと言われる妊婦さんと比べてみましょう。妊婦さんの場合、10,000人あたり1年間に29人が血栓症を起こすとされます。よってピルを使用している場合は妊婦さんの3分の1以下程度のリスクといえます。

 

 血栓症は40歳以上や肥満、喫煙などのリスク因子を持つ方に起きやすいことが知られています。そこで血栓症のリスクがある方は希望をしていてもピルをおすすめできないこともあります。また血栓症は開始後3ヶ月以内に起きることが多く、その後は治療期間が長くなればなるほど徐々にリスクが下がっていきます。そこで最初の3ヶ月は月に1回ずつ来院して頂き、副作用が起こっていないかの確認をしてからピルを処方します。

 

 またピルを処方する際によく聞かれることは、妊娠・出産への影響です。ピルには排卵を抑制する効果があるので「飲んでいると子供ができにくくはならないか」と心配するのはもっともな事と思います。このような懸念は専門家の間にもあったため、多くの研究が行われてきました。




 その結果、どの低用量ピルにおいても服用終了後3ヶ月以内に約90%で排卵が再開することがわかっています。妊娠を希望して低用量ピルを中止した場合は1年以内に84~88%に妊娠が成立しており、中止後の妊娠率は低用量ピルを飲んでいなかった人とかわらないこともわかっています。また中止後の妊娠率は低用量ピルの内服期間とは関係がない=長期間に内服しても影響はしないこともわかっています。

 

 ピルの心配な点についておわかりいただけたでしょうか。上記のことを踏まえてピルを治療に選ぶかどうかはやはり個々の患者さんの状況にもよるでしょう。もし疑問点や不安があればご相談頂ければと思います。

 

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