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2021年3月29日
婦人科 佐野 靖子
ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版発売に伴い2026年8月7日に更新しました。
こんにちはミラザ新宿つるかめクリニックの佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会(旧更年期学会)の専門医であり、一般の婦人科診察に加え女性のヘルスケアや更年期障害を専門としています。以前のブログ(更年期障害のホルモン補充療法 前編)では更年期障害とホルモン補充療法について大まかに説明しました。今回は少し細かい部分にスポットを当て、医師と相談しながら患者さんが選択できる投与方法について説明します。
女性ホルモン剤であるエストロゲン製剤には飲み薬、パッチ、ジェルがあります。飲み薬を経口剤と呼ぶのに対し、パッチやジェルは経皮剤と呼ばれます。では経口剤と経皮剤で効果や副作用に差はあるのでしょうか。
まず効果についてです。各種のエストロゲン製剤がどのぐらい血液の中の女性ホルモン(エストラジオール濃度)を上昇させるかを調べたデータがあります。これによると飲み薬よりもジェルやパッチの方が使用している際の女性ホルモン濃度は高くなる傾向にあるようです。飲み薬の場合、口から摂取されると食道・胃を通って腸で吸収され、その後肝臓に運ばれて全身の血液の中に入ります。この過程で少なからず分解されてしまう成分もあります。一方経皮剤では、皮膚から吸収されたエストラジオールは直接血液の中に入り効果を発揮します。そのため経皮剤の方が血液中に移行しやすく、女性ホルモンを上昇させる力は強い傾向にあると考えられます。ただしこの女性ホルモン濃度の違いは必ずしも効き目に現れるほどではなく、飲み薬でも十分に更年期障害を緩和する効果は期待できます。

では副作用はどうでしょうか。飲み薬のエストロゲン製剤は肝臓で分解されますが、分解の際にできる物質(代謝産物)が血栓症の原因となる可能性が指摘されています。一方ジェルやパッチの場合は肝臓を通らず血液の中に吸収され、使用しても静脈血栓塞栓症(VTE)リスクの上昇は認めないと報告されています。そこでホルモン補充療法ガイドライン2025年度版にも経皮エストロゲン投与ではVTEリスクは増加しないと記載があります。一方飲み薬のエストロゲン製剤はVTEのリスクを2-3倍に増加させ、投与初年度のリスクが最も高いとされています。ただ絶対リスクの増加は50代の女性1000人あたり1年間で1.1人とされており、痩せ型の女性の場合はもっとリスクが下がると言われています。よって血栓症のリスクが低い50歳代のやせ型の女性が使用する分には大きな支障になる可能性は低いと考えられます。

経皮投与のエストロゲン製剤は肝臓を通らないので、肝臓に負担がかからないことが一番のメリットです。そこで元々肝臓が悪かったり、胆石症があったり、肥満などのVTEリスクがある場合は経皮剤が適しているといえます。経皮剤にはパッチとジェルがあります。エストロゲン製剤単独のパッチ(エストラーナ®)やジェル(ル・エストロジェル®、ディビゲル®)または経口のエストロゲン製剤(ジュリナ®)を使用する場合、子宮がある女性は黄体ホルモンの飲み薬と一緒に使用する必要があります。メノエイドコンビ®パッチにはその名の通りエストロゲンと黄体ホルモンがコンビで含まれています。飲み薬と併用する必要はありません。
ここまで経皮剤のメリットについて説明しましたが、パッチやジェルにも弱点はあります。パッチの弱点は痒みや剥がれが起こる場合があることです。こればかりは個人差が多く、使ってみないとわからないことが多いです。またジェルには薬剤を吸収させるためにアルコールが含まれています。アルコールでかぶれを起こしたりする方は使えない場合があります。
婦人科の外来では患者さんの既往歴、健康診断の結果、体型等を考慮して、飲み薬でも大丈夫か、パッチやジェルの方がいいかなどを相談して決めていきます。他に持病があり、ホルモン補充療法が慎重投与である場合は、パッチやジェルしかすすめられない場合もあります。次回はもう一つの投与の違いである持続的投与法・周期的投与法について解説していきます。
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文献
日本女性医学学会:ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版. 金原出版株式会社,2025
安井敏之.“Ⅲレジメンの選択4.投与量はどうやって決めるか?”.今日からできるホルモン補充療法HRT実践マニュアル. 水沼英樹,高松潔編著.中外医学社,2015,P100-107
公開日:2021年3月29日
(2026年8月7日更新)
