胃カメラとバリウムどちらがいいか

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック消化器内科の津川直也です。

今回は胃癌検診に関してまとめていきます。

 

 日本における胃癌検診は、主にバリウム検査(上部消化管造影検査)と胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の二つの方法によって行われています。

それぞれの検査には異なる特徴があり、そのメリットとデメリットを理解することは、適切なスクリーニング法の選択において重要です。

よく「どちらの検査を受けた方がいいですか?」と患者さんから質問されることがありますが、私としては内視鏡検査を推奨させて頂いております。
以下にそれぞれのメリット、デメリットをまとめつつ、私が内視鏡検査をお勧めする理由も記載していきます。


〇 バリウム検査 〇
バリウム検査は造影剤を飲み込み、その後にX線撮影を行うことで胃内の異常をチェックする方法です。この検査は長い間、日本の集団検診で広く用いられてきました。


・メリット
1. 非侵襲的手法:身体に直接器具を挿入することなく、外部からの撮影で診断するため、身体的負担が少ない。
2. 簡便性:検査自体が比較的短時間で完了し、準備やリカバリー時間も短い。
3. コスト面:内視鏡と比較して低コストで実施可能であり、集団検診に適している。


・デメリット
1. 感度の限界:早期胃癌の発見においては限界があり、異常があった場合精密検査として内視鏡が必要となるケースが多い。
2. 被ばく:X線を使用するため、少量ながら放射線被ばくが伴う。
3. 偽陽性・偽陰性のリスク:微細な病変の見落としや、非癌性病変の誤判定が発生する可能性がある。

 

 

〇 内視鏡検査 〇
内視鏡検査は、長い管状のカメラを口か鼻から挿入して胃の内部を直接観察する検査方法です。視覚的に病変を確認でき、必要に応じて胃の組織を採取して検査し、良性か悪性かを診断できます。

・メリット
1. 高精度診断:直接視覚的に胃の状態を観察できるため、早期胃癌の発見率が高い。
2. 組織診断可能:疑わしい病変があれば、その場で組織を採取して病理診断が可能。
3. 治療と連携:内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの治療と直接連携が可能。

・デメリット
1. 侵襲性:検査自体が身体に一定の負担をかけるため、特に高齢者やリスクのある患者には留意が必要。
2. コストと時間:検査費用が高く、各検査に要する時間も長めであるため、集団検診にはやや不向き。



 日本における胃癌の発生率は依然として高く、早期発見がその予後を大きく左右します。

バリウム検査は身体的負担が少なくコストも低いため、大規模な集団検診には適していますが、早期発見の能力に限界があります。

一方、内視鏡検査は高精度で早期胃癌の発見に優れていますが、個々の患者にとっては身体的負担が大きく、コストも高いです。
したがってコストを考えなければならない胃癌検診の全体的な戦略としては、リスクに基づく適切な検査法の選択が重要であり、胃癌のリスクが高いとされるピロリ菌感染者や家族歴を有する患者さんには、より精密な内視鏡検査が推奨されますが、既往も何もないリスクの低い患者さんにはまずバリウム検査でスクリーニングを行うことも許容されると考えます。

そんな中で私が内視鏡検査を推奨する理由としては、内視鏡検査の方がバリウム検査よりも胃癌による死亡率と進行胃癌の発生率を減少させることが報告されているからです。

2022年に掲載された論文※によると、胃癌検診を受けていない患者と比較し、胃癌による死亡率はバリウム検査では37%、内視鏡検査では61%も低いと報告されています。そして進行胃癌の発生率はバリウム検査で12%、内視鏡検査で22%低くなると報告されています。

早期の胃癌の発生率は内視鏡検査で高かったことから、内視鏡検査では早期胃癌の段階で発見出来るため、死亡率・進行胃癌の発生率が下がったと考えられます。

最終的には、ライフスタイル、リスクファクター、個別の健康状態に基づいて、最適な検診方法を選択することが求められますが、以上に記載した論文の結果からも患者さんに質問された際には私は内視鏡検査を推奨させて頂いています。

 内視鏡検査を受ける際、患者さんの一番の不安は辛くないかどうかという点と考えます。当院では鎮静剤・鎮痛剤の使用が可能であり眠った状態での検査が可能です。鎮静剤・鎮痛剤の使用が怖いという方には、口からの内視鏡よりも吐き気の少ない鼻からの内視鏡も選択可能です。

内視鏡を受けたいが不安があるという方も、検査前にしっかり問診と相談をすることが出来ますので、受診頂ければと思います。

 

※引用論文:Cancer Scienceの”Effectiveness of endoscopic screening for gastric cancer: The Japan Public Health Center-based Prospective Study”

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