こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック消化器内科の津川直也です。
今回は前回の続きとして、肝機能障害を指摘された後の精査に関してまとめていきます。
〇原因〇
肝機能障害を起こす原因としては様々なものがあります。
例としては脂肪肝(アルコール性、非アルコール性)、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、悪性腫瘍、甲状腺機能異常、などがあります。
肝機能障害を指摘された際には問診(既往歴、内服歴、サプリメント、飲酒量など)、スクリーニング採血、腹部超音波検査などを行い、上記の疾患などの罹患がないかを調べていくこととなります。
・スクリーニング採血
前回のブログで記載した通り、採血での上昇項目に着目することで原因疾患をある程度推測することは可能です。しかし、原因疾患を確定することは困難であり、治療が必要か経過観察としていいかの判断も難しいです。そのため、上昇の原因を検索することが必要となってきます。
スクリーニングには採血が有用であり、脂質異常症などの項目と同時に、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、甲状腺機能などを調べていきます。
具体的な項目としては、
HBs抗原→B型肝炎
HCV抗体→C型肝炎
IgG、抗核抗体→自己免疫性肝炎
IgM、抗ミトコンドリア抗体→原発性胆汁性胆管炎
TSH、T3、T4→甲状腺機能
などがあります。
これらに該当するものがあれば確定診断となり、治療を開始していくこととなります。
該当するものがなければ問診結果と合わせて、薬剤性、脂肪肝(アルコール性、非アルコール性)などと診断し、治療開始もしくは経過観察の判断を行っていきます。
・腹部超音波検査
腹部に超音波を当てることにより、腹部ガスや皮下脂肪の量にも左右されますが、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓をスクリーニングすることができます。それにより、肝硬変に至っていないか、肝臓内に腫瘍などがないか、胆汁の流れが悪くなっていないか、脂肪肝になっていないかなどを評価することができます。
また、肝臓エラストグラフィーという肝臓の硬さを調べる検査を行うこともでき、肝硬変を評価する肝臓の線維化の程度などの情報も得ることが出来ます。
放射線の被曝や針を刺すなどの体に対する負担がなく、食事を摂っていなければすぐに行うことができ、その場で結果を得ることが出来るなどのメリットがあります。
・腹部造影CT検査
基本的にはスクリーニングの画像検査には腹部超音波を行っていきますが、その際に肝臓内腫瘤、胆汁うっ滞などのさらに詳細な画像検査が必要となる際、肝機能障害の程度が強く最初から詳細な画像検査が必要と判断される際にはCT検査を行っていきます。
このCT検査においては、気管支喘息の既往、腎機能障害、造影剤アレルギーがなければ造影剤を使用していきます。造影剤を使用することにより、得られる情報が格段に増え、確定診断をしていけることが多くなります。
・肝生検
採血、腹部超音波検査、造影CT検査によっても原因がはっきりしないが、肝胆道系酵素の数値が高く、さらなる精査が必要と考えられる場合は肝生検を考慮していくこととなります。
肝生検とは肝臓に針を刺して一部組織を採取していく検査です。その採取した検体を顕微鏡で調べ原因を特定していきます。この検査には入院が必要となりますので、必要な際は適切な施設へご紹介させて頂くこととなります。
〇最後に〇
肝機能障害の治療はアルコール性であれば禁酒、薬剤性であれば被疑薬の中止、自己免疫性肝炎であればステロイドの内服、など肝機能障害の原因により変わってきます。
原因の中には肝臓以外の悪性腫瘍によるもの、甲状腺機能異常によるものなどもあります。
どうせアルコールを沢山飲むからだな、最近太ってしまったからだななどと自己判断してしまわずに、もし異常値の指摘があった際には放置せずに医療機関を受診し、精査を行うことをお勧めします。