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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について③加齢に伴う変化

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。前回までのブログではPCOSの症状と治療について説明しました。今日は前回の続きで多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の加齢に伴う変化について説明します。

 

 PCOSの女性では卵巣に未熟な卵胞による嚢胞がたくさんできるため、卵巣は腫大しその体積は大きくなります。しかし加齢によって卵胞数が減ると、卵巣の体積は縮小することが報告されています。実際に以前PCOSと指摘されたことがあるという方でも、エコー検査をすると「もう多嚢胞の卵巣所見がほとんどわからなくなっている」ということはしばしば経験します。

 

 月経異常もPCOSの代表的な症状ですが、これも加齢に伴い症状が目立たなくなることがあります。PCOSの女性における月経異常の割合を調べた研究では、不規則な月経の割合は加齢とともに低くなり、規則的な月経の割合が増えていることが報告されています。また若年からPCOSの女性を長期間に渡り観察した研究では、年齢が上昇するにつれて排卵周期が回復した女性の割合が増えていた事も報告されています。このように加齢によって軽快することがあるというのがPCOSの特徴の一つです。


 一方でPCOSの女性が年齢を重ねるにあたっては、気を付けた方がよいこともあります。PCOSの女性では、総コレステロール、中性脂肪、LDL(悪玉)コレステロールがPCOSでない女性に比べて高い事が報告されています。また以前のブログPCOSの方は血糖を下げるインスリンの効きが悪くなっている場合がある(インスリン抵抗性)と触れました。実際にPCOSの女性では空腹時血糖やインスリン、インスリン抵抗性の指標になるHOMA指数が高いことがわかっています。これらの所見は40歳までの若年の年代でも認められており、年齢を重ねることでその影響があらわれてくる事があります。

 

 動脈硬化の指標の一つである頚動脈の膜の厚さ(内膜中膜複合体厚:IMT)をPCOS女性の年代に分けて調べた研究では、45歳以上のPCOS女性では頚動脈の膜の厚さが有意に厚かったと報告しています。またPCOS女性は周閉経期に心血管系疾患(心筋梗塞、狭心症など)や糖尿病、高血圧になりやすいことが報告されています。これらはPCOSの女性では元々高脂血症や糖尿病の素因を持つ方が多く、通常よりも早い時期にその影響があらわれてくるためと考えられます。


 そこでPCOSと診断された場合、月経不順の症状に困らなくなったとしても、生活習慣病には十分に気を付けるようにしましょう。健康診断は定期的に受け、高脂血症や糖尿病の項目には特に注意を払いましょう。また若年のうちからバランスのよい食事を心がける、甘い物はほどほどにする、暴飲暴食しないなどの心がけをして頂くといいでしょう。

 

参考文献

日本女性医学会,女性医学ガイドブック,金原出版株式会社,2016,P89-95

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