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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について① 病態・メカニズム

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因と治療について説明します。

 

 PCOSは生殖年齢女性の5-8%に発症するとされ、月経異常や不妊に卵巣の多嚢胞性変化やホルモン値の異常を伴います。外来診療において若年者の月経異常では比較的よく診る原因の一つです。私自身も大学生の時にPCOSの診断を受けていますし、知り合いにもPCOSの診断を受けている友人はちらほらいます。その一方で病態は未だに完全には解明されておらず、現在でも仮説にとどまっています。ただ今回はできる範囲でまずはPCOSの病態(仮説)ついて説明してみましょう。

 

 女性ホルモンの分泌は脳の視床下部という部分が大元を司っています。脳内の最中枢である視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が分泌され、その指令が脳内の下部組織である下垂体という部分に届きます。下垂体からは卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の2種類のホルモンが分泌され、これらが卵巣に直接命令をします。大元の視床下部ではGnRHを様々な律動で分泌し、FSHLHの分泌を調整しています。この2つのホルモンが適切に調整・分泌されることで、排卵・月経が起こります。


 PCOS
では視床下部におけるGnRHの律動が亢進していることが知られています。GnRHの律動が亢進するとFSHよりもLHが分泌されやすくなり、両者のバランスが崩れます。すると排卵がうまく起こせなくなり、月経の異常が起きます。また排卵にまで至らない未熟な卵胞が卵巣の中に多数認められるようになります(多嚢胞性卵巣)。

 ではなぜそもそもGnRHの律動の亢進が起こるのでしょうか。これには男性ホルモンであるアンドロゲンが卵巣から過剰に分泌されることが背景にあると考えられています。アンドロゲンが血液中に多くなると、ホルモン同士の相互作用から生理活性を持つ女性ホルモンのエストロゲンも増えます。増加したエストロゲンは視床下部に過剰な信号を送り、結果として視床下部からのGnRHの律動が亢進すると考えられています。

 

 また膵臓からはインスリンという血糖を下げるホルモンが分泌されます。PCOSの方ではこのインスリンの効きが悪くなっている場合があります(インスリン抵抗性)。効きが悪くなると、分泌量を増やしてカバーしようとします。ところがインスリンにはアンドロゲンの産生を促進する作用もあり、結果としてアンドロゲンも増えてしまいます。すると前述したようにGnRHの律動がさらに亢進し、症状が増悪してしまいます。肥満があるとインスリン抵抗性が上がることが分かっており、肥満はPCOSの増悪因子になります。

 

 現在ではこの高アンドロゲン血症とインスリン抵抗性がPCOSの病態の中心にあると考えられています。

 

 日本産婦人科学会の診断基準では①月経異常があり②エコーで多嚢胞性卵巣の所見があり③血中男性ホルモン高値またはLH基礎値が高値かつFSH基礎値が正常、のすべてを満たす場合を多嚢胞性卵巣症候群としています。ただこの診断基準を満たしても重症度は様々です。無月経を繰り返すような方もいれば、大抵の月経は順調で時々不調になる程度の方もいます。そこで一旦PCOSと診断された場合にも基礎体温をつけ、排卵の有無などは確認するといいでしょう。PCOSの治療については次回のブログに続きます。

 

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