こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック消化器内科の津川直也です。前回機能性ディスペプシアに関してブログを記載させて頂きましたが、機能性ディスペプシアと同様に機能性疾患であり、下痢や便秘、腹痛をメインの症状とする過敏性腸症候群(IBS)に関して今回はまとめさせて頂きます。
〇過敏性腸症候群(IBS)とは
大腸に悪性腫瘍や感染症などによる炎症などがないにも関わらず、数ヶ月に渡って便秘や下痢、腹痛などの症状が繰り返される、命に関わる疾患ではないですが生活の質を落としてしまう疾患です。
便性状により4つに分類されます。下の絵をブリストールスケールといい、便の性状を表しています。こちらの絵の
Tyoe1, 2がメインの方を ①便秘型IBS-C
Type6, 7がメインの方を ②下痢型IBS-D
Type1, 2, 6, 7が同じ位の頻度の方を ③混合型IBS-M
Type3, 4, 5の方を ④分類不能型IBS-Uとしています。
〇症状
便秘や下痢、腹痛などが繰り返されます。
〇原因
原因として大腸癌などの器質的な疾患はありません。
腸管の働きは自律神経によりコントロールされていますが、IBSの患者さんでは腸管の知覚が過敏になっていること、ストレスにより自律神経のバランスが崩れてしまうことにより症状が出現すると考えられています。
感染性腸炎に罹患した後にはIBSを発症しやすくなると言われており、これは腸管が過敏になってしまうことと、腸内細菌叢に変化が起きてしまうからではないかと言われています。
〇診断
診断にはローマⅣ診断基準という以下のものを使います。
・腹痛が
・最近3か月のなかの1週間につき少なくとも1日以上を占め
・下記の2項目以上の特徴を示す
(1)排便に関連する
(2)排便頻度の変化に関連する
(3)便形状(外観)の変化に関連する
ざっくり要約してしまうと、「最近3か月の中で毎週1日以上は下痢や便秘で困ってしまうことがある」かどうかと言うことです。
〇治療
IBSでは症状を生じさせる根本的な器質的な疾患がありません。そのため、症状を緩和させることが治療の目標となります。
食事指導・生活習慣改善を行うと共に、患者さんの症状に合わせ処方を行います。
具体的には便秘型には上皮機能変容薬(アミティーザ、リンゼス)という腸管内の水分の分泌を増加させる薬を中心に、下痢型には5-HT3受容体阻害薬(イリボー)という腸の動きや水の分泌異常を抑制する薬を中止に処方を行います。そこに個々の患者さんの症状に合わせて整腸剤、消化管運動調節薬(セレキノン)という消化管の運動を調節する薬、漢方、高分子重合体(コロネル)という寒天の様に便の水分量を調節する薬などを組み合わせて治療を行っていきます。
これらでも改善しない際には精神療法や抗不安薬、抗うつ薬を組み合わせることもあります。
〇最後に
腹痛、便秘、下痢などの消化器症状が長く続くことは生活の質を大きく落としてしまいます。背景に大腸癌など器質的な疾患が隠れている可能性もありますので、症状でお困りの方は一度受診して頂くことをお勧めします。
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