ブログBlog

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について② 治療

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は前回のブログの続きで多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療について説明します。

 

 前回のブログでは肥満はインスリン抵抗性を上昇させ、PCOSの病態を悪くさせる事を説明しました。PCOSの方の中には体重が増えた時期だけ生理が止まり、痩せると戻るという方もいます。そこで最初に行う治療は、肥満がある場合には減量です。程度にもよりますが2-6か月で5-10㎏の減量を検討します。ただし日本人ではやせ型のPCOSの方が多い傾向にあり、減量が不要な場合も多くあります。

 次に治療方針は、現時点において子供を希望するかどうか(挙児希望)によって分かれます。挙児希望がない場合は、定期的な消退出血を起こさせることを治療とします。PCOSの方ではエストロゲンの分泌は保たれ、子宮内膜は厚くなっているけれど、排卵が起きないために生理が起こらない事があります。すると子宮内膜は増殖し続け、子宮内膜増殖症や子宮体癌などのリスクになります。そこで子宮内膜を定期的にリセットさせるために黄体ホルモン製剤を用います。多毛やにきびなど男性ホルモン過剰による症状がある場合は、低用量ピルも用いられます。

 

 挙児希望があれば排卵誘発剤を使用します。第一選択はクロミフェンクエン酸塩という飲み薬です。反応が不良の場合はインスリンの抵抗性を改善させるメトホルミン塩酸塩(飲み薬)が併用されることもあります。これらの治療に反応が不良であれば、ゴナドトロピン療法という注射剤での排卵誘発の適応になります。またPCOSには腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)という特有の治療法があります。

 

 卵巣多孔術とは電気メスなどで卵巣の表面に35mmの穴を空ける方法です。PCOSでは未熟な卵巣が多数卵巣にあるのと同時に、卵巣の表面の白膜という膜が厚くなっています。卵巣の表面に穴を空けることで、排卵を起こしやすくし、同時にアンドロゲンの過剰な産生を抑えられるのではないかと考えられています。LODではゴナドトロピン療法と同等の排卵率や妊娠率が得られると報告されています。また排卵誘発剤で問題となる多胎の発生が少ないとされています。ただし手術による体へ負担もあるため、クロミフェンでの排卵誘発に反応しない場合に検討されます。

 とここまでの流れで「現在は挙児希望がなくても将来的に子供を望む場合、今は排卵を促す治療は必要でないの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。私自身も大学時代には同じような疑問を持ったことがあります。

 

 ただ現在は挙児希望がない場合、排卵を誘発するような治療を積極的に行うことは少なくなってきています。これにはいくつか理由があります。まずは排卵誘発剤で排卵が回復しても、使用を中止すると元の状態に戻ってしまうことがあります。そして飲み薬の排卵誘発剤(クロミフェンクエン酸塩)には子宮内膜が薄くなる副作用があり、長期的な使用はすすめられていません。また腹腔鏡下卵巣多孔術も自然排卵の効果は12年とする報告もあり、永続的な効果が得られるかはわかりません。そこで、現在の挙児希望がない場合、定期的な消退出血をおこすことと必要に応じた減量が産婦人科診療ガイドラインでもすすめられています。

 

 婦人科のページはこちらから

ブログ一覧に戻る

初診Web予約はこちら

レディースディPC レディースディSP

LINELINE公式アカウント
はじめました!

LINE

  • 翌月の診療担当医表と休診情報
  • 急な休診のご連絡
  • ブログの更新

などをお知らせします。

こちらのボタンから、
友だち登録をお願いします

LINE

PAGE TOP