こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニックの岡本です。私は外科の中でも甲状腺・乳腺を専門にしています。外科専門医・甲状腺外科専門医・乳腺専門医の資格も持っています。また、手術のみでなく内科的な治療も行っています。今日は甲状腺がんのお話をさせていただきます。
わが国では甲状腺がんと診断される方は年間およそ17,000人、甲状腺がんで亡くなる方は1,700人と推定されています。世界的にみても、甲状腺がんと診断される方は増えています。でも、本当に増えているのではなく、見つけ過ぎらしいのです。なぜなら診断される方は年々増えているのに、亡くなる方は減らないからです。甲状腺がんがあっても症状を起こさず、進行もせずに生涯を終えてしまうはずの方が、診断されてしまっているのかもしれません。なぜでしょうか?実は、甲状腺がんは健康診断などの診察や検査で偶然に見つかることが多いのです。
「がん」と言えば怖い病気と思われがちですが、そんな”ガンもどき”は甲状腺だけでなく、乳腺、前立腺、肺、腎臓など数多くの臓器で診断されていると思われます。知らずに済んだかもしれないのに、診断されて心は穏やかでなくなり、手術などの治療でつらい思いをする羽目になるかもしれません。このためアメリカでは甲状腺がんの検診をしないように勧告しています。
でも難しいのは、潜んでいるがんが”ガンもどき”か、本当に怖いがんかは見つかるまで分からないということです。症状がまったくない甲状腺がんでも、治療をしてみると6人に1人は怖いがん(再発しやすいがん)なのです。診察でしこりが触れるような大きながんでは、その可能性はもっと高くなります。検診が無意味だとか、有害だとかと決めつけるわけにはゆきませんね。
甲状腺がんの治療は病変を取り除く手術ですが、診断されたらそれが怖いがんかどうかを見極めて方針を決めます。症状がなければ6人に5人はおとなしいがんです。とくに小さな甲状腺がんは”ガンもどき”かも知れません。わが国の甲状腺腫瘍診療ガイドラインによれば、大きさが1cm以下の、転移を伴わない甲状腺がん(微小乳頭癌)では手術をせずに経過をみる方針を選ぶこともできます。10年経っても90%以上の方で進行しないことが分かっているからです。この方針は世界的にも広がりつつあります。ただし小さくても進行するがんもありますので、方針を決めるに当たっては内分泌外科専門医に相談されることをお勧めしています。
手術については次回のブログでお話しします。
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