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脂質異常症、治療していますか?  その①

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は脂質異常症と女性ホルモンの関係について説明します。

 

 脂質と言うと現代では悪いイメージをもたれる方も多いかもしれません。しかし脂質の一種であるコレステロールは私たちの体の細胞の膜を構成しています。また、体の機能を調節する副腎皮質ホルモンや女性ホルモンもコレステロールから作られます。さらにコレステロールには皮膚の保護をし、水分量を保つ働きもあります。そしてこれまた悪いイメージをもたれがちな中性脂肪も、エネルギー不足の時には分解され、エネルギー源として活躍するという大切な役割を本来は担っています。

 

 これらの脂質の働きは生命活動には不可欠ですが、飽食の時代である現代ではコレステロールや中性脂肪が血液中で増えすぎてしまう「高脂血症」が問題になります。特にLDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ、過剰になると血管の壁に沈着し動脈硬化を引き起こすことが知られています。


 女性ホルモンであるエストロゲンはこの脂質代謝に影響を与えることがわかっています。エストロゲンは肝臓において、LDLコレステロールの受容体(取り込み口のようなものです)を増加させる働きがあります。この受容体が増えると血液中から肝臓にLDLコレステロールが取り込まれ、血液中のLDLコレステロールは低下します。

 

 更年期にエストロゲンが低下してくると、肝臓への取り込みが減ることで血液中のLDLコレステロールが上昇しやすくなります。またエストロゲンは血管内の細胞に働きかけ、血管を広げる物質である一酸化窒素(NO)の産生を促進します。NOには血管を拡張させ、しなやかに保つ働きがあります。エストロゲンの低下によりこの効果も減少してしまうため、閉経後には動脈硬化が進みやすくなります。

 

 以上のような「閉経するとコレステロールが上がりやすくなる」ということ自体は知識としてよく知られているようです。そこで治療を受けていない高脂血症の方にコレステロールの上昇を指摘すると、「閉経したのでそれはしょうがないのです」とおっしゃる方もおられます。これはある意味では合っているし、ある意味ではそうではないとも言えます。

 


 閉経するとエストロゲンによる脂質代謝へのいい影響がなくなる分、他の部分でこれをカバーする必要があります。まずは生活習慣の改善です。詳細な内容は成書に譲りますが、腹八分目や脂っこいものを控えるなどの食事と運動です。ウォーキング・ジョギングなどの有酸素運動は血管内の細胞を刺激し、一酸化窒素(NO)の産生を促進する効果があることも報告されています。今まで運動習慣がない方でも、更年期を機に運動を始める事はとてもよい事でしょう。

 

 生活習慣を改善することで高脂血症がよくなり、その方のリスクに見合ったコレステロールの目標値の範囲内である場合は様子を見られるでしょう。しかし生活習慣の改善だけでは不十分な場合は薬での治療も検討されます。コレステロールの上昇を放置して動脈硬化が進展してもすぐには症状には出ません。しかし十数年経過した後に、脳や心臓などの重要な臓器の血管が詰まって、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞が発症するということも起こり得るためです。そして一度これらの病気になれば、今まで通りに働くことができなくなる可能性もあるし、寝たきりや介護が必要になるリスクも伴います。

 

 治療をしなかった場合に生じる病的な動脈硬化は、後から元に戻すことはできません。そこで健康診断などで脂質の異常を指摘され、「専門医受診」や「数ヶ月後に再検」の指示となっている場合、自己判断をせずに医師の診察を受けましょう。

 

 長くなったので今回はここまで。次回はホルモン補充療法が脂質代謝に与える影響について説明します。

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