こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。本日は機能性月経困難症の治療に使用されるディナゲスト0.5mg®について説明します。
以前のブログでもディナゲスト0.5mg®について「月経困難症の治療 低用量ピルとディナゲスト 後編」の中で触れました。その後発売から時間が経ち、当院でもディナゲスト0.5mg®を使用される患者さんが増えました。また2022年6月には後発薬であるジエノゲスト0.5mg®も発売され、治療に伴う経済的な負担も以前より軽減できるようになりました。そこで今回はディナゲスト0.5mg®の効果や副作用について、前回の内容と重複する部分もありますが、説明します。
まずディナゲストの基本的な事項について説明します。ディナゲストの成分である黄体ホルモンには排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑制する作用があります。そこでディナゲストを内服すると排卵がとまり、子宮内膜が薄く保たれ、月経が来なくなります。この効果を利用し子宮内膜症や子宮腺筋症などの器質性月経困難症の治療薬として2008年に発売されたのがディナゲスト1mg®です。ディナゲスト1mg®には月経困難症状を緩和させるだけでなく、病変を萎縮させる作用もあります。それまでは手術が中心であった子宮内膜症や腺筋症の治療も飲み薬でできるようになり、婦人科の診療には大きな変化をもたらしました。このディナゲスト1mg®の用量を減量し、あきらかな病変のない機能性月経困難症の治療のために開発されたのが2020年に発売されたディナゲスト0.5mg®です。
ディナゲスト0.5mg®は月経2-5日目より内服を開始し、毎日飲み続けます。飲み続けると排卵が起きず子宮内膜も薄く保たれるため、生理は来なくなります。ただ卵巣より分泌されるエストロゲンには子宮内膜を増殖させる作用があり、ディナゲストの子宮内膜増殖を抑える作用と拮抗します。その結果として子宮内膜が剥がれ、出血が起きます。この出血は9割の方にみられ、開始後8週間がピークとされています。通常は普段の月経とは違う少量の出血が数週間程度ダラダラと不定期に起こるということが多い様です。ただこれにはかなりの個人差があり、中にはほとんど出血しない方もいれば、毎月数日のみ定期的に出血する様な方もいます。また出血があるときには軽い下腹痛を伴うこともあるようですが、あっても元々の月経痛よりはかなり軽微で生活に支障はないようです。
器質性月経困難症に使用される元々のディナゲスト1mg®には女性ホルモンのエストロゲンを低下させる作用があり、更年期様症状や抑うつ症状などを起こすことがありました。しかしディナゲスト0.5mg®の場合、内服していても血液中のエストロゲン濃度は低下しないことがわかっています。実際に使用している患者さんを診ていても、更年期様症状や気分の変調を訴える方はかなり少ない印象があります。
ディナゲスト0.5mg®が登場する以前、機能性月経困難症治療の選択肢はかなり限られていました。低用量ピルも機能性月経困難症には効果がありますが、血栓症の副作用があり使用できない方もいます。また前兆ありの片頭痛がある場合は脳卒中のリスクが上昇するため低用量ピルは使用できません。ディナゲスト0.5mgRの登場によりこうした低用量ピルが使えない患者さんにも治療の選択肢が増えました。
また低用量ピルの休薬期間には、ホルモンが変動することにより頭痛やむくみ・倦怠感などがおこることがあります。片頭痛でも前兆のない方は低用量ピルを内服できますが、休薬期間には片頭痛の悪化が起きやすいと言われています。この点ではディナゲスト0.5mg®は休薬期間がなく、ホルモンを変動させにくいというメリットがあります。また低用量ピルを飲んでいても、休薬期間の出血の際には痛みが強いという患者さんもいます。その場合、不正出血はあってもまとまった出血をおこさないディナゲスト0.5mg®の方が楽であるという事もあるようです。
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