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飲み薬の黄体ホルモンの違いについて

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医・女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は日本で使用できる飲み薬の黄体ホルモン製剤の使い分けについて説明します。

 

 更年期症状を改善する女性ホルモンのエストロゲンには子宮内膜を増殖させる作用があります。そこで子宮をもつ女性がホルモン補充療法(HRT)を行う場合、子宮内膜を保護するためにもう一つの女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)を併用する必要があります。以前の記事では天然型の黄体ホルモン製剤であるエフメノ®カプセルが最近日本で発売され、使用できるようになったことを説明しました。一方従来から本邦で使用される合成黄体ホルモンにはデュファストン®(ジドロゲステロン)とプロベラ®(メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)の2種類があります。ではこの両者の違いは何でしょうか。

 

 デュファストン®は合成黄体ホルモンの中では構造が天然型黄体ホルモンに近く、他の合成黄体ホルモンに比べ乳癌のリスクが低いことが報告されています。そこで近年はHRTに黄体ホルモン製剤としてよく用いられています。古くから産婦人科領域で更年期の治療以外にも用いられており、副作用も少ないのもいい点です。しかし子宮内膜保護作用という点ではプロベラ®よりもやや弱い可能性があります。

 

 デュファストン®は子宮内膜の増殖を抑制し、分泌期内膜という落ち着いたフェイズに変化させることによって子宮内膜を保護します。一方プロベラ®の成分であるメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)は子宮内膜の増殖を抑制し、かつ萎縮させる効果を持っています。MPAの高用量の製剤は子宮体癌の治療薬として使用されますが、この子宮内膜の萎縮作用はデュファストン®にはありません。

 

 実際にHRTにデュファストン®を用いている場合、「不正出血がなく経過としては良好に見えるけれども診察すると内膜が肥厚している」ということはしばしば経験します。こういった場合は黄体ホルモンをプロベラ®に変更すると子宮内膜の肥厚がすみやかに改善する事もよく経験します。

 

 天然型の黄体ホルモンも子宮内膜保護の機序はデュファストン®と同様と考えられています。そこで天然型の黄体ホルモンやデュファストン®が普及しても、プロベラ®の出番がなくなることはないと考えます。プロベラ®にしかない子宮内膜萎縮作用とシャープな効き目が必要な場合が少なからずあるためです。ただし実際に子宮内膜の抑制がデュファストン®や天然型の黄体ホルモンで十分であるか、プロベラ®までが必要かどうかは行ってみないとわからないものです。

 

 

 またこれは私見ですが子宮内膜ポリープがあったり、子宮内膜がやや肥厚気味だったりする印象を受ける場合は最初からプロベラ®を選択します。プロベラ®による子宮内膜の萎縮作用を期待してのことです。以上のことを勘案するとやはりHRTは婦人科の診察ができるクリニックで施行するのが望ましいと考えます。

 

参考文献

岡野浩哉(2013).黄体ホルモンは何をどれくらい投与するか 水沼英樹・髙松潔(編) 
今日からできるホルモン補充療法 中外医学社 pp.115-125

 

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