こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。今年の2月にシルガードという子宮頚癌ワクチンが新しく発売されました。また「子宮頚癌ワクチンの周知」のためのリーフレットが自治体から各家庭に戸別配布されるようになり、子宮頚癌ワクチンについての問い合わせが増えてきています。そこで今日は子宮頚癌とワクチン、ワクチンの中でもサーバリックス・ガーダシル・シルガード9の違いについてなどを説明していきます。
まず子宮頚癌の原因になるのは性交渉によって感染するヒトパピローマウィルス(HPV)です。実はHPVには100種類近くの型があり、ある型は皮膚のイボ、ある型は性感染症である尖圭コンジローマ、ある型は子宮頚癌など様々な病気の原因になります。このHPVの中で子宮頚癌の原因になるものだけでも約30種類があると言われています。
HPVはありふれたウィルスで、女性の80%が一生に一度は子宮頚癌の原因になるHPVに感染すると言われています。ただしHPVに感染したとしても9割の女性では免疫力で自然に治り、かかったことに気付かないうちに治ってしまいます。ただし1割の女性では持続的に感染をおこし病変が進みます。一生のうちに子宮頚癌になる女性は1万人あたり132人で、1クラスが35人の女子校の2クラスに1人くらいです。また子宮頚癌が原因で亡くなる方は1万人あたり30人で、10クラスに1人くらいの割合です。
HPVには癌になりやすいハイリスクHPVとなりにくいローリスクHPVがあります。ワクチンはこのハイリスクHPVの感染を予防し、子宮頚癌になりにくくします。
子宮頚癌に進みやすいハイリスクHPVは16・18・31・33・35・45・52・58の8つの型です。この中でも16・18の2種類はとりわけ悪性になりやすく、かつ進行も早いことで知られています。
現在日本では公費で接種できるワクチンはサーバリックスとガーダシルで、サーバリックスはHPV16・18の感染を防ぐワクチンです。ガーダシルはHPV16・18に加えて尖圭コンジローマの原因になるHPV6・11の予防もできます。これらのワクチンを打てば65%の子宮頚癌が予防できます。
2021年2月に新しく発売されたのがHPV6・11・16・18に加えて31・33・45・52・58の予防もできるシルガード9です。子宮頚癌の90%が予防できます。ただ現時点では公費助成の対象にはなっておらず自費であるため、合計3回の接種で9万円近くかかります。
※ブログ執筆時から状況が変わり、シルガード9についても令和5年4月から定期接種を開始できる方針になりました。ただまだ準備を進めている段階ですので詳細は未定です。
子宮頚癌ワクチンは初めての性交渉前の接種が一番効果的とされており、公費助成で受けられるのは自治体により若干の違いはあるものの、おおむね中学1年生~高校1年生の間です。そこで例えば「今娘さんが高校1年生で子宮頚癌ワクチン接種を公費で受けられるぎりぎりの年齢である。本当はシルガード9がいいのだけれど費用が高いので自費では打てない。」ということであれば、あまりシルガード9にこだわる必要はないとも思います。シルガードが公費の助成対象になるのは少し時間がかかると思いますし、今公費助成の機会を逃せばサーバリックスやガーダシルでも自費で6万円近くの費用がかかります。
日本の調査でもサーバリックスやガーダシルの接種者がその後、子宮頚癌の前癌病変にかかりにくくなっているという結果が続々と報告されてきています。今の選択肢は、完全に自費でシルガード9を打つか、公費でサーバリックスまたはガーダシルを打つかの二択です。この場合、今公費で打てるサーバリックスまたはガーダシルで65%の予防効果でも十分という考え方も大いにあると思います。
では公費で子宮頚癌のワクチンを打つ機会は逸してしまったけれど、やっぱり打った方がいいの?という事についてはまた次回のブログで説明します。
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