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生理痛は女性の一生に影響する? その②

 生理痛は女性の一生に影響する? その②

 

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。前回までは月経困難症や子宮内膜症が女性の一生に与える影響、特に若年女性への自己実現への影響についてお話ししました。今日は月経困難症が妊娠・出産と老年期へ与える影響についてお話しします。

 

 まず妊娠・出産への影響です。月経困難症の原因は子宮内膜症の他に子宮腺筋症や子宮筋腫などがあります。このいずれもが不妊症の原因になります。子宮内膜症や腺筋症では、骨盤の中に炎症が起きます。炎症により卵巣と卵管がくっついたりすると、排卵をしたり、卵が子宮内膜に着床するのが妨げられ、妊娠しづらくなります。子宮筋腫や子宮腺筋症では子宮の壁が病変によって肥厚・変形します。すると着床に必要な子宮の生理的な運動も妨げられ、不妊の原因になります。


       

 妊娠が成立した場合でも、これらを合併した妊娠は流産のリスクを伴います。子宮内膜症では卵巣にチョコレート嚢胞とよばれる卵巣嚢腫ができる事があります。妊娠中にこれが感染を起こしたり、破裂したりすると流早産の原因になります。流早産を予防するために妊娠前に卵巣嚢腫を摘出する事もあります。しかし手術をすると正常部分の卵巣もダメージを受け、妊娠率が下がってしまう事もあります。これは治療における大きなジレンマになっています。また子宮内膜症のある女性では前置胎盤や常位胎盤早期剥離を起こしやすいこともわかっています。子宮腺筋症や子宮筋腫では子宮の壁が病変によって肥厚・変形します。このため赤ちゃんの成長に合わせて子宮が大きくなれず切迫流早産の原因になることがあります。

 

 月経困難症は妊娠・出産にも大きく影響しますが、閉経してしまえば生理もなくなるし、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫ともに大きくなることはありません。閉経後には一見、影響を受けることはないように思えます。しかし子宮内膜症の場合、閉経後も女性を脅かすことがあります。

 

 子宮内膜症でチョコレート嚢胞が閉経後に卵巣に残っている場合、嚢胞から癌が発生することがあり、年齢が上がるにつれ癌化率は上がります。また子宮内膜症のある人はない人に比べ、将来脳梗塞や狭心症になるリスクが高いことも近年わかってきました。子宮内膜症があると体内ではたえず炎症が起こっているため、全身の血管が硬く変化し詰まりやすくなると考えられています。

 

 このように月経困難症は女性の一生涯に大きな影響を与えます。産婦人科ではこれを大きな問題として捉えられています。そこで生理痛を始めとした月経困難症に早期にホルモン剤治療を開始し、将来予測される合併症を予防することに重点が置かれています。そこで生理痛がある場合は早期からピルや黄体ホルモン剤を使用し、妊娠の希望がでたら中止する。産後も次の妊娠まではホルモン剤を再開する。妊娠・出産が一段落すれば閉経までホルモン剤を使用するか、根治術を行うことも推奨されています。

 

 

           月経困難症の生涯の治療イメージ   
              

                            

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