「バリウム」と聞くと、どのようなイメージでしょうか。
おいしくない。口が白くなる。胃の検査でぐるぐる回転させられる。
など思い浮かぶと思います。
バリウムとは経口造影剤のことで、食道や胃、大腸などの消化管を体外から観察するために作られたものです。
内視鏡検査は体の内側から消化管を直接観察します。
詳細な情報が得られる一方で、異物(機械)が体内に入るという体への負担(侵襲)は
小さくありません。
しかしその不利益を上回るほど、機器の発達や技術の進歩も著しい分野です。
一方でバリウム検査は、詳細な情報を得るためには熟練の技術や読影力が必要とされるうえ、
避けることができない放射線被曝という問題もあります。
その中でも廃れることなく現在も行われているバリウム検査。
適応はしっかり見極めた上で適切に行わなければなりません。
今回は【食道X線造影検査】、【小腸X線造影検査】にしぼり、二回に分けてお話ししていきたいと思います。
その① 食道X線造影検査(食道透視)
食道の病気と言えば、食道癌に代表される悪性腫瘍や胃酸の逆流に伴う逆流性食道炎などが有名なところです。
これらの疾患は、診断に内視鏡検査が活躍します。
食道のバリウム検査が役立つのは、以下の様な機能的異常と言われる疾患です。
代表的なものをふたつ挙げてみます。
A 食道アカラシア
食道筋層内の神経叢の変性により、下部食道括約筋が弛緩不全を起こしてしまう疾患です。
通常食べ物が食道から胃へ向かうとき、つなぎ目を絞めている筋肉は緩み胃に入っていきます。
当疾患では、この筋肉が緩まなくなるために通過障害をきたします。
強いつかえ感、反復する嘔吐が最も典型的な症状です。
X線造影検査では、食道はフラスコ状の拡張を呈します。
治療としましては、内視鏡にて筋層を切開する方法も選択されるようになりました。
B ジャックハンマー食道(jackhammer esophagus ; JE)
食道体部の強い蠕動を特徴とする疾患で、下部食道括約筋の弛緩能力は保たれています。
X線造影検査では数珠様、コークスクリュー様所見を呈します。
こちらもつかえ感や胸の痛みを呈します。
これらを代表とする食道運動機能障害は決して頻度の高い病気ではありません。
しかし、原因のわからないつかえ感、胸の痛みなどの症状の中に、このような疾患が隠れていることもあります。
X線造影検査の活躍する分野です。お悩みの方はご相談ください。
次回のブログ・後編では、小腸X線造影検査についてお話します。
消化器内科 杉原一明
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