バリウム検査(消化管X線造影検査)について(後編)

  

今回は小腸透視検査についてお話ししていきます。

バリウムを使用し小腸に行き渡らせX線撮影する検査ですが、

行われる頻度はさほど多くはありません。

 

小腸は健常人でおよそ56メートルといわれる非常に長い管腔臓器です。

しかし食道や胃、大腸と比べると、病気が発生する頻度は少ないのも事実です。

 

当検査では、長い腸管をX線で異常の有無を検索するため、時間もかなり要する上に

検査者側にも相当な技術と読影力、根気が必要とされます。

 

主な適応としては以下のようなケースです。

・原因不明の腹痛精査、下血精査

・腸閉塞の精査

・炎症性腸疾患(主にクローン病)の小腸病変の評価

暗黒の臓器、小腸の検査は、X線の他にカプセル内視鏡、小腸内視鏡というものがあります。二つの検査を以下に簡潔に説明します。

 

〇小腸カプセル内視鏡検査

長径2cm程のカプセル(カメラ機能内蔵)を服用し、自動的に写真を撮影していきます。カプセルは小腸、大腸を通過すると肛門より排出されます。

大きめのカプセルを服用するだけ、という簡便さはありますが、どこかに狭窄(狭くなっている腸)がある場合そこに詰まってしまうことがあります。その場合、腸閉塞に進展することもあり、カプセルを手術で摘出しなければならない、というケースも稀に存在します。

 

〇小腸内視鏡検査

長い内視鏡を使用しX線透視下に行う検査です。

内視鏡にバルーンという風船が付いており、小腸を折りたたみながら(短くしながら)進んでいきます。

まずは口から小腸の途中まで、その後肛門から小腸の途中までという具合に上と下から

二度行わなければなりません。

直接画像をリアルタイムで確認できる点や、組織検査や止血治療も可能という利点はありますが、なにぶん侵襲の大きい検査です。

 

 

 

小腸透視(経口法)の実際(検査の流れ) 

 

①検査前日に軽い下剤を服用し、当日は朝から絶食となります。

②適度な濃度に薄めたバリウムを服用します。

X線で胃から十二指腸に流れたのを確認し、撮影を開始します。

④小腸が重ならないように適宜体勢を変えていきます。(立位、臥位、側臥位など)

 体勢を変えても重なる場合には、お腹を圧迫することで小腸を移動させて撮影します。

⑤ある程度時間が経過すると、バリウムの動きがゆっくりとなり停滞し始めます。

 その間は、検査室の中で体操をしたり、歩き回ったりしバリウムが進むのを促します。

⑥大腸の形が見えるようになれば到達となりますので、検査終了となります。

⑦服用したバリウムが腸の中で固まらないよう下剤を服用し帰宅となります。

 

文章に起こしてみると簡単ですが、実際には1時間で終わる方から4時間かかっても終わらない方などとても様々です。

体を動かす努力や、腸蠕動を促すお薬を注射しても、バリウムが停滞し大腸まで到達しない場合には、途中で断念することもあります。

 

撮影時間よりも待ち時間の方が長い検査ですので、検査医師は励まし役も兼ねます。

・・・これがけっこう大事な役目です。

 

検査期間中は、普段は時間がとれずできないようなお話を患者さんとすることができます。

こういう何気ない会話の中から、患者さんの実際の診療に生かせるヒントを得ることも

あります。この検査の隠れた利点なのかもしれません。

 

ある程度のX線被曝の欠点もあり、検査適応は慎重に判断せねばなりません。

しかし小腸精査においては先に述べたふたつの検査と比較しますと、

侵襲やリスクの面からも先んじて選択されることが多いのも事実です。

 

以上、昔から行われ、現在も踏襲され続けている消化管X線造影検査のお話でした。

当クリニックでは、小腸透視検査も可能ですので原因不明の腹痛等でお悩みの方は

一度ご来院の上でご相談ください。

 

                            消化器内科  杉原一明

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