こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック消化器内科の津川直也です。
今回はアニサキス症に関してまとめたいと思います。
〇アニサキス症とは
海産魚介類の生食によって発生する寄生虫症で、刺身など生魚を食べる習慣のある日本では多く発生しています。世界で起こるアニサキス症の95%は日本で起きているとの報告もあります。厚生労働省からの報告ではアニサキス症による食中毒は、年間300-500件発生しており、例年3月、10月に多くなっています。しかし、実際のアニサキス症の発生件数は診療報酬のレセプトからは年間7000件ほどあるのではないかとの報告もあります。
アニサキスとは線虫という寄生虫の一種であり、アニサキスが寄生している魚介類をヒトが摂取することで発症します。
寄生する魚介類はサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどですが、東京都内ではシメサバによる発症が多いそうです。
〇症状
症状としてはアニサキス虫体が暴れる場所によりますが、
・激しい腹痛
・悪心・嘔吐
・蕁麻疹 などがあります。
暴れる場所が胃であれば胃アニサキス症、腸であれば腸アニサキス症といいます。
激しい腹痛はアニサキスが胃や腸の壁に侵入しようと貫入することで生じると考える方が多いかもしれませんが、本来胃や腸管の粘膜には痛覚はありません。そのため胃や大腸の生検を行う際、ポリープなどの腫瘍を切除する際には痛みは生じません。
ではなぜアニサキスが壁に貫入すると激しい腹痛を生じるのか。それは、アニサキスアレルゲンに対してのアレルギー反応が原因と考えられています。実際、胃アニサキス症の方のCT画像では、アニサキスが貫入している部分を中心に胃壁がかなり厚く腫れており、胃癌のように見えることもあります。
そして中にはアニサキスアレルゲンに対してアナフィラキシーショックを呈する方もおり、アニサキス症はただの食中毒と侮ることは出来ません。
〇診断・治療
海産魚介類の生食の食事歴があり、強い腹痛がある際には胃アニサキス症を疑い上部消化管内視鏡検査を施行します。そこでアニサキスが胃壁に貫入していることが確認できれば診断できます。同時に胃壁に貫入しているアニサキスを鉗子で取り除くことで治療をすることもできます。アニサキスを取り除くとすぐに腹痛は改善していきます。
胃よりも先に進んでしまっていると内視鏡下での診断・治療は難しくなります。
しかしその際も、アニサキスは人体内では数日―1週間で死滅するのでそれに伴い症状は改善していきます。
〇最後に
アニサキス症はきちんとした方法を取れば予防することが出来る食中毒です。
具体的には
・-20℃で24時間以上冷凍保管
・70℃以上または60℃なら1分加熱 でアニサキスは死滅します。
しかし食酢、醤油、わさび、塩ではアニサキスは死滅しません。
きちんとした処理を行い予防して、刺身などを楽しむようにしましょう。
そして万が一、魚介類を生食してから数時間後に強い腹痛を認めた際には、胃アニサキス症を疑い上部消化管内視鏡検査を行える医療機関を受診しましょう。
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