こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック消化器内科の津川直也です。
今回は様々な疾患の原因となってしまうピロリ菌に関してまとめたいと思います。
ピロリ菌とは正式名称ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)という胃の粘膜に感染する細菌です。1982年にオーストラリアの研究者であるBarry MarshallとRobin Warrenがピロリ菌の単離、培養に初めて成功し、2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
ピロリ菌は井戸水などに生息していますが、人間に感染する原因としては、飲み水や食べ物を介して体内に入ることです。多くは胃酸分泌が少なく胃内の免疫機能が完成していない幼児期に感染すると言われており、親からの口移しなどでも感染するリスクがあります。一方、大人になっての新規の持続感染は起こりにくいと言われています。近年日本では衛生環境が改善しているので、2020年現在ピロリ菌の感染率は70歳代以上で40%超、40歳代で20%程度、30歳代で10%程度の感染率となっており、それよりも若い世代ではさらに感染率が低いことが予想されます。
〇ピロリ菌が原因となる疾患
ピロリ菌が原因となる疾患は多数報告されており、感染する胃に関する疾患として
・慢性胃炎(萎縮性胃炎)→胃癌の発生
・過形成性ポリープ
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・胃MALTリンパ腫
・機能性ディスペプシア が挙げられます。
また胃とは直接関係のない疾患として
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
・鉄欠乏性貧血 が挙げられます。
これら以外にもパーキンソン症候群、アルツハイマー病などにも関係があるのではないかと言われており、研究が進んでいます。
〇診断
ピロリ菌が感染しているかどうかを調べる検査は複数あります。
当院で施行している検査は
①尿素呼気試験
ピロリ菌がウレアーゼという酵素により尿素を分解することを利用した検査法。
尿素を含んだ検査薬を飲んで頂き、内服前後の吐く息を調べて存在診断をします。
②抗体検査
採血を行い、血中のピロリ菌に対しての抗体を調べて感染しているかを判断します。
③便中抗原検査
便の中にピロリ菌の成分が入っているかを調べて感染しているかを判断します。
以上の3つとなります。
〇治療
ピロリ菌の感染が確認された際には除菌をすることが推奨されます。除菌をすることにより胃癌の発生率は1/3になると言われており、他の疾患に関しても発症を防ぐことができます。
当院で施行している方法としては
・初回の除菌治療(一次除菌)
胃酸分泌抑制薬(タケキャブ)に2種類の抗生剤(アモキシシリン、クラリスロマイシン)の合計3剤を1日2回、7日間内服して頂きます。この方法で90%以上の方が除菌成功となります。
もしこれで除菌出来なかった際には
・2回目の除菌(二次除菌)
胃酸分泌抑制薬(タケキャブ)に2種類の抗生剤(アモキシシリン、メトロニダゾール)の合計3剤を1日2回、7日間内服して頂きます。この方法で98%の方が除菌成功となります。
〇最後に
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると、感染したことがない人と比べて胃癌の発生リスクが5倍にはなると言われています。また、罹患期間が長く胃炎が進めば進むほどそのリスクは高くなります。感染しても除菌を行うことで胃癌の発生を1/3-1/2に出来ると言われていますので、ご家族にピロリ菌に感染していた方がいる方、胃の不調を認める方は早めの胃カメラを受け、ピロリ菌が陽性であった際には早めに除菌を行っていくことをお勧めします。