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低用量のHRTについて

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は更年期障害のホルモン補充療法(HRT)の話題で「低用量のHRT」についてお話しします。

 

 性成熟期の女性では女性ホルモンである血中のエストラジオール濃度は平均100pg/ml程度に保たれています。このエストラジオール濃度は徐々に低下し閉経後には20pg/ml以下になります。HRTは女性ホルモンを補充し更年期症状を緩和させる治療で、通常のHRTでは血中エストラジオール濃度は4080pg/ml程度まで上昇します。以前はHRTの効果を得るには通常のHRT程度の用量、つまりある程度の血中エストラジオール濃度の上昇が必要であると考えられていました。

 

 しかし時代とともに通常量のHRTより少ないホルモンの補充量でものぼせ・ほてりや骨粗鬆症の予防に効果を発揮することがわかってきました。現在では骨への刺激は20pg/ml程度、またほてり・のぼせなどの血管運動症状は40pg/mlまで血中エストラジオール濃度が上昇すれば効果があるとされています。そこで通常のホルモン補充量よりも低い量でHRTを行う「低用量のHRT」が提唱されました。現在では低用量のHRTは通常量の半分程度のホルモン量で行うことが一般的になっています。

 

 では低用量のHRTのメリットとは何でしょうか。まず不正出血が少ないことです。通常量でのHRT、特に持続投与ではコントロールができない不正出血が続くことがあります。一方低用量のHRTでは持続投与でも出血が起きにくいことが知られています。また子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などの病気がある場合、HRTをすると女性ホルモンに反応して病変が大きくなることがあります。こういった場合も用量を減らすと影響を少なくできる可能性があります。

 

 またHRTを続ける上での大きな懸念点には乳癌のリスクの上昇があります。現在乳癌リスクはHRTの施行期間と関連し、ガイドライン上は5年までは上昇しないとされています。この観点からは症状が落ち着けばHRT5年までの間に中止することが理想的ですが、実際には中止するとのぼせ・ほてりが再燃してしまいHRTを再開せざるを得ない事もあります。HRTの乳癌リスクにはエストロゲンとともに子宮体癌予防のために併用する黄体ホルモンが関連するとされています。低用量HRTではエストロゲンとともに黄体ホルモンも減量することができ、乳癌リスクへの影響を減らすことが期待できます。そこでHRTが長期化する場合や長期化が予想される場合は低用量への移行を推奨する論文も近年出てきています。当院でもHRTが長期化する場合や乳癌の家族歴などのリスクがある方などは積極的に低用量化を提案しています。

 

 ただし低用量のHRTにはいくつか弱点もあります。まずは通常量に比べると効き目が現れるのが少し遅い印象があります。私見ですが通常量のHRTの場合、開始して1週間以内でのぼせ・ほてりは改善することが多いです。一方低用量の場合は1ヶ月程度経過してようやく効果を感じ始めるという方が多いです。中には低用量から移行してもなかなか効果を感じにくく通常量に戻す方もおられます。効果や切れ味の面では通常量の方が高いと言えるかもしれません。

 




 現在日本で使用できる薬剤で低用量HRTに使用可能であるのは飲み薬のジュリナ・プレマリンかジェル製剤のル・エストロジェルの3剤です。メリット・デメリットを踏まえ、より合ったHRTの選択をしていきたいですね。

 

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