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低用量ピルとホルモン補充療法の違い

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医・抗加齢医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は低用量ピルとホルモン補充療法(HRT)の違いについて説明します。

 

 低用量ピルには血栓症のリスクがあり、加齢とともに血栓症を起こすリスクは上昇します。そこで40歳以上は慎重投与、50歳以上は禁忌(投与してはいけない)となっています。ではなぜ低用量ピルが慎重投与や投与してはいけない年齢になっても、更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)は可能なのでしょうか。

 

 実はHRTで補充する女性ホルモンの量は低用量ピルと比べるとかなり少なくなっています。よって副作用を起こすリスクも低く、50歳以降でも投与可能なのです。ただピルには低用量ピルや超低用量ピルもあり「ホルモン量は十分に低いのでは?」と思われるかもしれません。ちょっと紛らわしいこの点を今回は説明します。

 

 ピルは元々避妊のために開発されたお薬です。自分の卵巣からホルモンが分泌されている上で排卵を抑えるにはある程度のホルモン量が必要です。ピルは1960年代に米国で初めて認可され、当時のピルには現在の5-7倍の女性ホルモン量が含まれていました。そのため血栓症、肝機能障害、吐き気などの副作用が問題になりました。そこで排卵が抑制できる範囲で、できるだけ少ないホルモン量にするために改良が重ねられました。この流れで登場したのが低用量ピルや超低用量ピルです。つまりこの低用量や超低用量はあくまで元々のピルと比較した場合であり、現在の低用量ピルや超低用量ピルでもHRTに比べれば女性ホルモンの量は多くなります。



 では具体的に低用量ピルとHRTではどの程度ホルモン量が異なるのでしょうか。ピルにはエチニルエストラジオール(EE)という一番活性の強い種類のエストロゲンが含まれています。一方、更年期障害の治療に使うプレマリン錠には結合型エストロゲンが含まれています。低用量ピル1錠中の女性ホルモン活性はプレマリンに換算すると6錠に相当します。更年期障害の治療ではプレマリンを1日に1錠(0.625mg)使用するので、HRTで補充するホルモンの量は低用量ピル1日量の約1/6程度です。またHRTに使用される他の飲み薬やパッチ、ジェルには17βエストラジオールという天然型のエストロゲン製剤が使用されておりプレマリンよりもさらに力価は低いと考えられます。


 このホルモンの力価を火に例えてみましょう。低用量ピルはホルモン剤全般の中では中くらいの力価なので中火とします。するとHRTで使うホルモン量は弱火に相当します。そして最近は通常量の半量である低用量のHRT(lower dose HRT)もあり、これはとろとろの弱火ぐらいに相当します。そしてHRTの場合、弱火やとろとろの弱火でも十分なのです。ピルのように自分のホルモンを抑えて排卵を抑制する必要はなく、ホルモンが欠乏している状態で症状を改善させるために少量補充するのが目的であるためです。ピルが使いにくい、あるいは飲めない年齢になってもHRTが可能なのはこういった違いがあるからです。

 

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