子宮筋腫や子宮内膜症に対する偽閉経療法について

2021年7月16日
婦人科 佐野 靖子

2026年10月29日
新しい種類のGnRHアンタゴニストであるイセルティ錠が発売になったため本文の一部を改訂、更新しました。

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は子宮筋腫や子宮内膜症に対する偽閉経療法について説明します。

 偽閉経療法とは女性ホルモンを下げて閉経に近い状態をつくり、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気を治療する方法です。生理をとめ、病変を縮小させることができます。

 偽閉経療法には従来、注射剤や点鼻薬であるGnRHアゴニストというお薬が主に用いられてきました。GnRHとは卵巣を刺激するホルモンの分泌を促進するホルモンで、脳から分泌されます。GnRHアゴニストというのは本来、GnRHを刺激し、卵巣を刺激するホルモンの分泌を上げるように働きます。つまり投与すると短期的には卵巣を刺激するホルモンが上昇し、卵巣が刺激され、女性ホルモンの分泌が促進されます。しかしGnRHアゴニストの使用をし続けた場合、刺激され続けた脳は一杯一杯になって機能を停止してしまいます。これをダウンレギュレーションといいます。このダウンレギュレーションが起こると今度は逆に女性ホルモンの分泌が止まります。こうして閉経に近い状態が再現され、治療効果を及ぼすというわけです。例えば子供が強く勉強しなさいと言われ続けると逆効果になって全く勉強しなくなることがありますね、そんなイメージです。

 このGnRHアゴニストには2つ欠点がありました。投与し始めて2か月程度、つまりダウンレギュレーションが起こるまでは女性ホルモンの分泌が逆に増えてしまい(フレアアップと呼びます)、一時的に病変が大きくなったり、不正出血が起こったりすることがあります。また胃酸で分解されるため飲み薬としては使用できませんでした。

 この欠点を克服したのが2019年3月に発売されたレルミナ錠です。レルミナ錠はGnRHアンタゴニストといって、最初から卵巣を刺激するホルモンの分泌をブロックします。よってGnRHアゴニストのようなフレアアップが起こらず、出血も比較的起きにくいとされています。また2026年3月には新しいGnRHアンタゴニストの飲み薬であるイセルティ錠が発売されました。レルミナ錠は食事の影響を受けるため食前(食事の30分前まで)に内服する必要がありましたが、イセルティ錠は食事の影響を受けず、食前食後を問わず内服可能であるのがメリットです。レルミナ錠は発売当初子宮筋腫のみに適応がありましたが、現在は子宮内膜症にも使用できるようになっています。イセルティ錠は現在子宮筋腫に基づく諸症状に使用することができます。

 偽閉経療法は使う薬の種類に関わらず使用できるのは半年までと決まっています。女性ホルモンを強く抑える作用があり、骨粗鬆症のリスクがあるためです。そこで6ヶ月の治療後には、ジェノゲストなどの他の月経困難症治療に切り替える必要があります。逆にジェノゲストなどの投与中に副作用の出血が多い場合等は一時的に偽閉経療法に切り替えて治療の強度を上げる場合もあります。

 偽閉経療法がよく使用されるのは子宮筋腫や子宮内膜症の手術の前です。偽閉経療法で病変を縮小させ癒着も軽減することができ、手術の安全性も高まります。手術前の偽閉経療法は昔から注射剤等(GnRHアゴニスト)でもよく施行されてきましたが、注射剤等の場合効果が十分に出るまでは、フレアアップのため出血がおこったり、病変が増大したりすることが一つの懸念点でした。しかしGnRHアンタゴニストのレルミナ錠やイセルティ錠が登場したことでこのデメリットが克服され使用しやすくなりました。

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公開日:2021年7月16日
(2026年10月29日更新)

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