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子宮筋腫や子宮内膜症に対する偽閉経療法について

子宮筋腫や子宮内膜症に対する偽閉経療法について

 こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は子宮筋腫や子宮内膜症に対する偽閉経療法について説明します。

 

 偽閉経療法とは女性ホルモンを下げて閉経に近い状態をつくり、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気を治療する方法です。生理をとめ、病変を縮小させることができます。

 

 偽閉経療法には従来、注射剤や点鼻薬であるGnRHアゴニストというお薬が主に用いられてきました。GnRHとは卵巣を刺激するホルモンの分泌を促進するホルモンで、脳から分泌されます。GnRHアゴニストというのは本来、GnRHを刺激し、卵巣を刺激するホルモンの分泌を上げるように働きます。つまり投与すると短期的には卵巣を刺激するホルモンが上昇し、卵巣が刺激され、女性ホルモンの分泌が促進されます。しかしGnRHアゴニストの使用をし続けた場合、刺激され続けた脳はいっぱいいっぱいになって機能を停止してしまいます。これをダウンレギュレーションといいます。このダウンレギュレーションが起こると今度は逆に女性ホルモンの分泌が止まります。こうして閉経に近い状態が再現され、治療効果を及ぼすというわけです。例えば子供が強く勉強しなさいと言われ続けると逆効果になって全く勉強しなくなることがありますね、そんなイメージです。

 このGnRHアゴニストには2つ欠点がありました。投与し始めて2か月程度、つまりダウンレギュレーションが起こるまでは女性ホルモンの分泌が逆に増えてしまい、一時的に病変が大きくなったり、不正出血が起こることがあるのです。また胃酸で分解されるため飲み薬としては使用できませんでした。

 

 この欠点を克服したのが2019年3月に発売されたレルミナ錠です。レルミナ錠はGnRHアンタゴニストといって、最初から卵巣を刺激するホルモンの分泌を抑えるように働きます。よってGnRHアゴニストのように病変が一時的に大きくなったりせず、出血も比較的起きにくいとされています。ただし現在では子宮筋腫のみに使えるお薬であり、子宮内膜症の方には適応外となります。

 偽閉経療法は使う薬の種類に関わらず使用できるのは半年までと決まっています。女性ホルモンを強く抑える作用があるので、骨粗鬆症のリスクがあるからです。そこで使用されるのは非常に限られた場合になります。

 

 一つは子宮筋腫や子宮内膜症の手術の前です。偽閉経療法で病変を縮小させ、癒着も軽減することができ、手術が行いやすくなります。その結果手術の安全性も高まり、結果的に患者さんのメリットになるのです。

 

 もう一つは逃げ込み療法といって、閉経前後に使用する方法です。例えば子宮筋腫のせいで生理が重く、非常に困っている。ただ、50歳は過ぎていて、そろそろ閉経するかもしれないし手術はしたくない。そんな場合に半年間偽閉経療法を行い、卵巣の機能を落とすことでそのまま閉経するのを期待するという方法です。ただし、最近では53-54歳まで生理がある方も多く、閉経を予測する方法も確立してはいません。そこで半年間の治療では閉経に至らず、終了後に生理が再開してしまうこともあるので注意が必要です。

 

 この逃げ込み療法は昔から注射剤でも施行されてきましたが、注射剤の場合効果が十分に出るまでは、病変が悪化することが一つの懸念点でした。しかし2019年にレルミナ錠が登場したことでこのデメリットが克服され、行いやすくなってきています。子宮筋腫に困っているけれども手術はしたくないという方は一度婦人科で相談されてはいかがでしょうか。

 

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