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放っておかないで・・・脂肪肝 その③

最終回は治療についてのお話です。

 

まずこのNAFLDという病気ですが、治療の目標とするところは

メタボリックシンドロームの制御と肝臓線維化の進展予防です。
脂肪が落ち、健常な肝臓に戻すことができればそれが理想です。

 

基本となるのは食事療法、運動療法を中心とした生活習慣の改善です。

耳が痛い方も多いかと思いますが、これが何より実践するのが難しいのかもしれません。

 

  • ① 食事療法

食べ過ぎない、油ものや甘いものを摂りすぎない。

一言で言えばそうなりますが、日本肝臓学会では以下の内容が推奨されています。

 

・総カロリー 30kcal/kg/日  体重80kgの人であれば一日2400kcal程度

・炭水化物の比率 5060

・脂質の比率   2025

 

過剰な糖質制限や脂質制限は、心的ストレス増大や栄養バランスの観点からも推奨はされておりません。大切なのは、長続きするように無理のない範囲で自分の計画を立てることです。内容や量など、管理栄養士さんから説明を聞くのもひとつの方法です。

 

 

  • ② 運動療法

適度な運動は、NAFLDに限らず様々な疾患の予防に有効です。

生活習慣病しかり、癌腫によっては発癌予防にもなります。

 

一日3040分、少し汗をかく程度の運動を週に34回継続することで、

肝臓の脂肪が落ちてくるという報告もあります。

 

有酸素運動に限らず、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動(レジスタンス運動)も効果的です。

しかし、膝や腰などに過度な負担がかかる運動は怪我の元となりますので、少しずつ強度を上げていくなど計画的に行わなければなりません。

 

また、運動療法はストレス発散にもなるため、気候の良い時期には屋外での早歩きもお勧めです。



食事、運動療法による減量も具体的目標として、体重の7%という数値も提唱されています。

目標もなくただひたすら痩せる、というのはなかなか難しいものです。

無理のない範囲で、段階を踏みながらこの目標へ一歩一歩向かっていくことをお勧めします。

 


  • ③ 抗酸化療法(ビタミンE製剤)

ビタミンEには体内で増加する活性酸素を捕捉し、蛋白質や脂質の酸化を抑制する抗酸化作用があります。脂質の連鎖的酸化を阻止することで線維化の進展を防ぎます。

 

血液生化学検査値(ALT)、肝組織所見ともに効果があると言われています。

しかし過剰摂取は出血傾向助長や骨粗鬆症のリスク増加等の問題もあり、注意が必要です。

今後も新たな治療薬の登場を期待したいところです。

 

  • ④ 併存する疾患(肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧)の適切な管理

NAFLDの患者さんは、これらの疾患を合併していることが少なくありません。

以前お話しましたように、心臓、血管の病気の発生が予後にも大きく影響します。

 

血圧管理や血糖コントロール、脂質異常への対策は極めて重要となります。

かかりつけ医を持ち、必要時には各専門医への通院が必要となる場合もあります。

 

病気の段階や併存疾患により、通院頻度、検査の間隔などには個人差があります。

自身はどういう状態で、これから何を注意していけば良いのか、

まず何より自覚を持つところから治療は始まります。



NAFLDに関して、3回にわたってお話ししてきました。

自覚症状はなく、すぐにどうこうということはないであろう、という先入観から、

明日から、来月から、来年から、となりがちな疾患です。

 

しかし、長期間放っておくと、肝臓の線維化が進行し肝硬変や肝癌になることもあるということをご理解頂けたかと思います。

 

健康診断で「脂肪肝」の指摘や、肝臓の項目で「要精密検査」とありましたら、先延ばしすること無く一度医療機関を受診することをお勧めします。

健康寿命を伸ばすのは、早い段階での意識改革です。

 

消化器内科 杉原一明

 

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