こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。前回のブログでは子宮頚癌ワクチンのサーバリックス、ガーダシル、シルガード9についての違いや公費助成について説明しました。子宮頚癌は性交渉で感染するヒトパピローマウィルス(HPV)が原因で、子宮頚癌ワクチンは癌に進展させやすいハイリスクHPVの感染を予防します。しかし一度感染してしまったHPVを排除する効果は認められていません。そこで、接種がすすめられる一番の対象は初めての性交渉を迎える前の女性であり、公費助成の対象になるのは多くの自治体で小学6年生~高校1年生までの間です。
ではこの公費助成の時期が過ぎてから子宮頚癌ワクチンを打つことに意味はあるのでしょうか。もちろん、公費助成の時期が過ぎたとしても性交渉の経験がなければまだHPVには感染しておらず、ワクチンの効果が期待できます。また既に性交渉を迎えている場合でも、今までワクチンで防げるHPVに感染したことがない場合、今後の感染を予防することができます。婦人科のガイドライン上でも性交渉の有無を問わず、26歳までの女性には強く接種が進められています。そして26歳を過ぎてしまっても45歳までの年齢層では子宮頚癌ワクチンの有効性が証明されています。また初交後にワクチンを打つ場合でも、接種前にすでにウィルスに感染しているかいないかの検査は不要です。
2021年2月には従来のサーバリックスやガーダシルに加え、9つのHPVを予防するシルガード9が発売されました。シルガード9は従来のワクチンに比べ予防できるハイリスクHPVが5つも増え、90%近くの子宮頚癌を予防することができます。このため公費の対象になる年齢でワクチンを打てなかった方でも、シルガード9で予防できるHPVに感染していなければ高い予防効果を得られる可能性があります。
ただし、子宮頚癌ワクチンの有効性が確認されているのは45歳の女性までです。ワクチンを打つと免疫反応がおきて、体内で抗体ができることで病気が予防できます。この免疫反応は加齢とともに低下し、高齢になれば若者に比べて抗体ができにくいことが知られています。子宮頚癌ワクチンの場合、46歳以上の方に予防効果があったというエビデンスが現時点ではありません。そこで46歳以上の女性には推奨されないと現時点ではなっています。
またワクチンを接種した場合でも、一つ気をつけなければいけない事があります。子宮頚癌の健診は定期的に受診しましょう。子宮頚癌の予防率はガーダシル・サーバリックスの場合は65%、シルガードの場合は90%の予防効果であり、100%ではありません。また子宮頚癌は20-30歳台の若年者に増えていますが、早期にみつかれば妊娠・出産に影響が少ない形で治すことも可能です。20歳を過ぎたら子宮頚癌の検診を受けましょう。
HPVワクチンは子宮頸がんだけでなく尖圭コンジローマも予防できます。詳しくはこちらのブログをお読みください。
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