2021年4月14日
婦人科 佐野 靖子
ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版発売に伴い2026年8月7日に更新しました。
こんにちはミラザ新宿つるかめクリニックの佐野です。私は女性医学会(旧更年期学会)の専門医であり、一般の婦人科診察に加え女性のヘルスケアや更年期障害を専門としています。前回のブログでは更年期障害のホルモン補充療法の持続的投与・周期的投与法の違いについて説明しました。今日はその続きです。
前回まではホルモン補充療法(HRT)の持続的投与法・周期的投与法の具体的な方法について説明しました。両者を比べると持続的投与法の方が簡便で、子宮体癌の予防効果も高いと言われています。となると「みんな持続的投与法でいいじゃない。周期的投与法のメリットってあるの?」と思いますよね。ただ周期的投与法がいい時もあります。

不正出血はホルモン補充療法の一般的な副作用で、特に閉経前~閉経後1年以内にHRTを開始すると起きやすくなります。閉経前後の時期はまだ卵巣から少量ホルモンが出ていたり、子宮内膜も敏感だったりします。この状態でエストロゲンと黄体ホルモンを持続的に投与すると、頻繁に出血がおきる事があります。こういった出血は予期できないタイミングに起こり、少量でも数週間ほど続いたりすることもあって、そのパターンを読むことはできません。このコントロールされない出血が原因でHRTを中断してしまう方も多いのです。
そこでこの出血対策のために用いられるのが周期的投与法です。前回の図をおさらいしましょう。

周期的投与法では
① 前半の10-14日間はエストロゲン単独で投与します。
この間に子宮内膜は少し増殖します。
② 後半の10-14日間はエストロゲンに加えて黄体ホルモンを併用します。
黄体ホルモンは前半に増殖した内膜をそっと保つ働きをします。
③ その後5-7日程度休薬します。
この休薬をおくことで急激に体内のホルモン量を下げます。ホルモン量が下がると子宮は内膜を維持できなくなり、出血が起こります。
周期的投与法ではこのように休薬によって定期的に出血を起こし、子宮内膜をリセットします。いわば自然の生理周期に近いパターンでホルモンを補充することで周期を作り、生理のようにまとめて出血させる。そのために予測不可能な不正出血を起こしにくくするというイメージです。
ただ2021年に天然型の黄体ホルモン製剤であるエフメノ®が発売されると、現在は下の図のような休薬のない周期的投与法が主流になってきました。

周期的投与法でエフメノ®を用いる場合はエストロゲン製剤を単独で14日間、その後黄体ホルモンを併用してさらに14日間内服し、休薬はおきません。黄体ホルモンの内服が14日間と長いため、黄体ホルモンを内服している最中にリセットの出血が始まることが多いです。そして14日間の黄体ホルモンの内服が終了する前に、リセットの出血がすでに終了していることもあります。
周期的投与法で休薬をおいた場合、休薬時に更年期症状が再燃してしまう事もあります。休薬のない周期的投与法の場合、休薬ありに比べて再燃がおきにくいことや管理が比較的簡便であることがメリットです。
閉経前や閉経後1年未満の場合は不正出血を起こしやすいので、周期的投与法で開始することが多いです。周期的投与法で開始した場合でも、子宮の内膜は時間とともに徐々に萎縮し、周期的な出血は減ってきます。出血が減ってきた場合は「そろそろ持続的投与法でも大丈夫かも」のサインです。周期的投与法から持続的投与法へ切り換えることを考えてもいいでしょう。また閉経前や閉経後1年未満でも子宮の入り口が狭く、子宮内膜の細胞診(子宮体癌検査)が採取できない場合は、持続的投与法をすすめます。周期的投与法はエストロゲン単独の期間があり、子宮体癌の抑制は持続的投与法には劣ります。そこで子宮体癌検査ができない方には出血コントロールよりも予防を優先する方が望ましいと考えます。
またある程度閉経から時間が経過していても持続的投与法でHRTを開始すると頻繁に出血する方もいます。その場合は患者さんと話し合いながら、持続的投与法を継続していくか、一度周期的投与法へ変更するか決めていきます。
今回は3回にわたって経皮剤・経口剤の違いや持続的投与法・周期的投与法について説明しました。ライフスタイルにあった薬や投与法を主治医の先生と相談できるといいですね。
婦人科のページはコチラから
文献
日本女性医学学会:ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版. 金原出版株式会社,2025
公開日:2021年4月14日
(2026年8月7日更新)
