こんにちはミラザ新宿つるかめクリニックの佐野です。私は女性医学会(旧更年期学会)の専門医であり、一般の婦人科診察に加え女性のヘルスケアや更年期障害を専門としています。前回のブログでは更年期障害のホルモン補充療法の持続的投与・周期的投与の違いについて説明しました。今日はその続きです。
前回まではホルモン補充療法(HRT)の持続的・周期的投与法の具体的な方法について説明しました。両者を比べると持続的投与法の方が簡便で、子宮体癌の予防効果も高いと言われています。となると「みんな持続的投与法でいいじゃない。周期的投与法のメリットってあるの?」と思いますよね。ただ周期的投与法にもメリットがあり、周期的投与がいいという時もあるのです。
不正出血はホルモン補充療法の一般的な副作用で、特に閉経前~閉経後1年以内にHRTを開始すると、不正出血が起きやすくなります。閉経前後の時期はまだ卵巣から少量ホルモンが出ていたり、子宮内膜も敏感だったりして、ホルモン剤に反応しやすいからです。その状態で持続的なホルモン刺激が続くと、子宮内膜は膜を維持することができず、ちょこちょこ出血を起こします。この出血は不意に起こり、数週間ほど続いたりして、そのパターンを読むことはできません。このコントロールされない出血が原因でHRTを中断してしまう方は多いのです。
そこでこの出血対策のために用いられるのが周期的投与法です。
前回の図をおさらいしましょう。
周期的投与法では
この間に子宮内膜は少し増殖します。
黄体ホルモンは前半に増殖した内膜をそっと保つ働きをします。
この休薬をおくことで急激に体内のホルモン量を下げます。ホルモン量が下がると子宮は内膜を維持できなくなり、出血が起こります。
周期的投与法ではこのように定期的に出血を起こし、子宮内膜をリセットします。いわば自然の生理周期に近いパターンでホルモンを補充することで周期を作り、生理のようにまとめて出血させてあげている。そのために予測不可能な不正出血を起こしにくくするというイメージです。
閉経前や閉経1年未満の場合は不正出血を起こしやすいので、周期的投与法で開始することが多いです。周期的投与法で開始した場合でも、子宮の内膜は時間とともに徐々に萎縮し、休薬期間の出血は減ってきます。出血が減ってきた場合は膜が出血しにくくなってきた目安になります。このタイミングで周期的投与から持続的投与へ切り換えることを考えてもいいでしょう。また周期的投与でも休薬が不要な場合もありますが、これは出血のパターンや診察での内膜の厚さを確認した上で相談・調整していきます。
ここまで周期的投与の優れた点についてまとめました。とはいっても持続的投与の方が簡便で管理もしやすいもの。よって当院では患者さんと相談の上、閉経から1年以上経過している場合は持続的投与から始めることが多いです。しかし閉経から時間が経っていても、持続的投与法で頻繁に出血することもあります。その場合は患者さんと話し合いながら、持続的投与法を継続していくか、周期的投与法へ変更するか決めていきます。
ライフスタイルに合わせ、投与経路(飲み薬・パッチ・ジェル)と投与方法(持続的投与・周期的投与)を調節することで、ホルモン補充療法の満足度は大きく変わってきます。是非どの薬がいいかわからない、不正出血で困っているなどがあればご相談下さい。
婦人科のページはここから→URL