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鎮静剤を使用した内視鏡検査について (前編)


鎮静剤を使用した内視鏡検査について ~前編~

 皆様こんにちは。ミラザ新宿つるかめクリニック、消化器内視鏡専門医の福島啓太です。今回は内視鏡検査における鎮静剤の効果についてお話しします。

 当院は「鎮静剤使用で苦痛の少ない内視鏡検査」を謳っておりますが、内視鏡における鎮静剤の効果はどれほどのものなのでしょうか。百聞は一見に如かずと申しますが、鎮静剤の使用無しと、有りの双方を経験されたことがある方のほとんどはその効果に納得されているのではないかと思います。つるかめ会は内視鏡による胃がん検診の黎明期から積極的に鎮静剤を用いてきました。しかし受診された皆様の感想の診療録への記録は「つらかった」「つらくなかった」の二択に留まっていました。これに基づき次回の内視鏡検査時の鎮静剤使用の調整をしていましたが、より定量的に評価できないかと考え、20204月から当院ではより細かなスケールを用いて検査の苦痛度の評価を行っています。

 今回は2020年上半期(4月から9月)に当院で行った上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)について、鎮静剤を使用した経口内視鏡(口から挿入する方法)、鎮静剤を使用しない経口内視鏡、そして経鼻内視鏡(鼻から挿入する方法で、鎮静剤使用無し)に分けてデータをお示ししながらお話しします。ただし鎮静剤使用の有無は受診者の希望に基づくものであり、そのためにデータにはある程度の偏りがあることにご注意ください。

 前置きが長くなりますがご容赦ください。最初に鎮静剤における検査の安全性についてお話しします。どんなに検査が楽でも、危険性が高ければ鎮静剤の使用はお勧めできません。薬で強制的に眠るのが怖いという方もしばしばいらっしゃり、その気持ちも理解できるものです。しかし最近の内視鏡学会の統計では鎮静剤に関連する偶発症の発生率は0.0013%と報告されているように、当院を含めて内視鏡検査時に使われている薬剤は安全性の高いものが選択されています。血圧や呼吸状態の監視方法なども標準化されてきています。一方で、例えばゲーゲーと嘔吐反射を繰り返すことは大変つらいだけでなく、胃粘膜裂傷などの危険性がありますし、充分な観察も難しくなります。このような状況で充分な観察をするためには検査時間(=つらい時間)も長くなってしまい、鎮静剤を使わないことによるデメリットのほうが大きいといえるでしょう。また、この体験の結果として、つらかったのでもう二度と受けたくない、という方を作ってしまうことも問題です。がん検診のための内視鏡検査は生涯で一度だけ受ければ大丈夫というものではありません。一定の期間毎にきちんと受けていただけるように楽な検査を提供する、というのも我々内視鏡医の使命であると考えています。

 次に、当院で用いている内視鏡検査時における苦痛度を示す尺度についてご説明致します。これにはNRSNumerical Rating Scale)という、「実際に感じている痛み」を数字で評価する指標を応用しました。NRSでは「痛み」を指標としていますが、内視鏡では「痛み」とともにカメラが喉を刺激することによる嘔吐反射や、空気が胃や腸に溜まることによるお腹の張りといった「苦しさ」もありますので、「痛み」を「つらさ」に置き換えました。受診された皆様には「全く苦しくなかった = 0」、ご自身が想像しうる最大の苦痛 = 10」というように、01011段階で検査後の受診者に評価していただきました。疼痛緩和治療の領域では一般に4以上だとかなりの痛みがあると解釈されることが多いようです。実際に使用しているものがこちらです。

 内視鏡医としては自身が担当した検査が(鎮静剤無しでもつらさが最小限にできるように努めているものの)苦しかったと言われるとつらいものがありますが、この指標は受診される方の次回の検査のつらさを改善させるための大切な記録です。受診された方は遠慮無く率直な評価をつけてください。

 長くなってしまいましたので、今回は前編としてここまでとし、次回のブログ・後編で集計したデータをお示しします。興味を持たれた方は引き続きご覧いただけますと幸いです。

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