こんにちは、ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科の佐野です。私は産婦人科専門医、女性医学会専門医であり女性のヘルスケアやピル・ホルモン治療を専門としています。今日は月経困難症の治療に使用されるミレーナについてお話しさせていただきます。
ミレーナとは子宮の中に入れて月経痛を緩和させるお薬です。ミレーナは3cmぐらいのT字型の器具で、内部には黄体ホルモンの成分が含まれています。子宮の中に入れると、表面から徐々に黄体ホルモンが放出されます。この黄体ホルモンには子宮の内膜を薄く保つ作用があります。通常の周期では子宮の内膜は妊娠に備えて厚くなりますが、ミレーナを入れて子宮の内膜が薄くなると月経の量が減少し、月経痛が改善します。
月経困難症の治療薬は他に低用量ピルや黄体ホルモン製剤などもありますが、飲み薬なので頭痛やむくみなどの副作用が出現することがあります。しかしミレーナは子宮の中に入れるお薬なので、全身への影響が少ないというメリットがあります。ミレーナは一度装着すると5年間に渡って効果が持続します。毎日飲み薬を飲むのが面倒という方にも向いているでしょう。またミレーナは避妊薬としても使う事ができます。おりものを粘っこくして精子の侵入を防ぎ、子宮内膜を薄くして卵の着床を妨げる働きがあるためです。正しく使用した場合1年間に避妊できる確率は99.8%と言われています。
ミレーナは子宮の中にいれるという性質上、欠点もあります。まずはお産の経験がない場合は子宮の入り口が狭く入れられないことがあります。また子宮筋腫などで子宮内腔が変形している場合も同様で、入ったとしてもすぐに脱落してくる場合もあります。ミレーナを入れた直後には不正出血がしばらく続きます。これはミレーナが子宮内膜を薄く保とうと働くために起こり、時間の経過とともに徐々に落ち着いていきます。挿入後はミレーナが入った刺激でおなかがしくしくと痛むこともありますが、これも徐々に改善します。
頻度は低く0.2%未満程度ですがミレーナが子宮の中で感染を起こすことがあります。そのためミレーナを挿入する前には性感染症と子宮内膜の癌検査をして、子宮の入り口の感染や子宮内膜の癌がないことを確認していきます。また子宮外妊娠の既往がある場合や子宮内腔に突出する筋腫やポリープがある場合などミレーナが入れられない場合もあります。
ミレーナの一番の適応になるのは経腟分娩の経験がある経産婦さんです。子宮の入り口がお産で広がっているので挿入時の痛みも少なく、挿入も比較的容易です。しかしお産の経験がなくてもミレーナの治療は受けることができます。入り口の開き具合は個人差が大きいので挿入できるかどうかは診察した上で判断します。
クリニックに来院される患者さんでもミレーナを積極的に希望される方は増えています。もしミレーナが入れられなかったとしても低用量ピルや黄体ホルモン製剤など他の治療法もあります。生理痛は我慢しなくてもいい時代です。困ったら一度婦人科で相談を考えてみて下さい。
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